日記
ハウル


○月×日
 今日はヴェノムと町に行った。魔法薬のバーゲンセールが目的だ。金持ちのくせにせこいババアだ。節約した分俺の小遣い増やせ。釣り用品を買ったら本も買えねぇじゃねぇか。貯金崩すのヤなんだよなぁ。今度またオヤジの宝物庫からなんかくすねてこよ。

○月×日
 ヴェノムの大切にしていたツボを割った。とりあえず接着剤でひっつけて、幻術で誤魔化した。珍しく本気で力を使った。いくらヴェノムでも見破れないだろう。ちょっと疲れた。

○月×日
 今日は珍しく客が来た。なんだかいかついおっさんだった。話を聞くと、意中の相手を射止める媚薬が欲しいらしかった。ムカついたから、ジェームスにやるって言ったらいらないと言われたので、仕方なく別の魔法使いのところに蹴り出した。生きてるかなぁ。でもやっぱ、生ゴミは他所に捨てるのが一番。

○月×日
 今日は別の町に行った。今度はガーデニング用品のバーゲンだそうだ。俺は初めて見る野菜の種を試しに買った。途中、いつものように仮面をしたヴェノムを、未婚のおくゆかしい美女だと思い込んだ馬鹿が口説いてた。とりあえずバーゲンの余韻に浸ってたヴェノムはあまり気づいてなかったから、男の方は暗がりに連れ込んで二度とナンパが出来ないぐらいの恐怖を植えつけておいた。まったく、妖怪だとも知らずに。ムカつく男が世には多い。オヤジといい、ナンパ男なんてロクでもないもんは撲滅させてやりたい気分だ。




日記
ラァス

○月×日
 今日は一人で町にお使いに行った。途中、変なおじさんに可愛いねと声を掛けられた。おじさんにはもったいないとっても素敵な宝石のついた指輪をしていたので、無邪気なフリしてホテルに行って、ちょっと恥ずかしい写真を取ってやった。カメラはカロンに貰ったもの。なんか、最近商売しているようだ。
 宝石と財布の中身を口止め料として貰って、心も懐もハッピー。

○月×日
 今日はアミュと一緒に森を散歩した。途中変な魔物に襲われたけど、アミュが手なずけた。最近、危機感を感じるのは僕だけ? でもアミュ、最近すごく可愛いなぁ。胸も結構大きくなってきたし、師匠みたいにはならなくていいけど、巨乳になったらうれしいなぁ。

○月×日
 カロンにデートに誘われた。嫌だといったら、最近出来たテーマパークの優待券があるというので、仕方なく一緒にいってやった。大好きなウサギをモデルにしたキャラのキグルミがいて、カロンをおいて触りまくった。魔道技術を駆使した「乗り物」の代金はカロン持ち。食事ももちろんカロン持ち。土産のヌイグルミもカロン持ち。とか思ってたら、実は乗り物なんかの技術指導をしていたらしく、みんなタダだったみたい。色々やってるんだな、この人。歩いているだけで女の人に騒がれるのに、本当にもったいない男だ。
 アミュとメディアには僕からだと言って土産を渡した。けっこう楽しかった。今度はアミュと行ってみよう。




日記
アミュ

○月×日
 今日はラァス君とお散歩に行った。道端に生えた食べられる草を摘んでいると、可愛い大きな魔物が出てきた。手招きするとじゃれてきてすごく可愛かった。熊を大きくしたような魔物で、肉食で凶悪な魔物だとラァス君は言った。こんなに可愛い子なのに、ラァス君は苦手みたい。

○月×日
 ラァス君がヌイグルミをくれた。とても大きくて変なヌイグルミ。ふわふわで抱き心地がよいので、抱き枕にちょうどいいと思った。高かったのではないかと聞いたら、ぜんぜんと言った。ラァス君はけっこうお金を持っているんだって。人殺しの仕事って、儲かるんだなぁって思った。

○月×日
 お姉さんと料理をした。住んでいた村では、雑炊や煮物のようなものがほとんどだった。だから、お姉さんの作るようなお洒落な料理は憧れだった。だけど、せっかく教えてもらったのに、火加減を失敗して焦がしてしまった。火を操るのは得意なんだけどな。どんなものかよく分からなかった。メディアちゃんは塩加減を間違えて、砂糖を入れて変な味になったので、スパイスで誤魔化してお姉さんに叱られていた。失敗して少し悲しかった。





日記
メディア

○月×日
 ハウルの馬鹿を沼に蹴落としてやった。あいつは人をからかうのが趣味で、いつも嫌味を言ってくる。ヒルに吸われることを期待していたけど、どうやら自然界の生き物は、神には噛み付かないらしく、汚れただけだった。でも、いい気味だった。

○月×日
 書庫で禁術の本を発見! わざわざ隠してあったみたいだけど、隠されたものを探すのは得意中の得意。ヴェノム様もまだまだ甘いわ。おかげで知りたかった呪術についても深い知識を得る事ができた。また探してみよう。

○月×日
 最近寒くなってきた。ハウルの馬鹿が薄着でうろついて見てて寒くて鬱陶しい。まったく、何を考えているのかしらあの馬鹿。まともなのはラァスだけらしく、二人で着膨れていると、神というものが恨めしくなってきた。ただ、ヴェノム様は別物だろう。彼女はある意味妖怪だから。




 ヴェノムは弟子たちの日記を一通り読み、呆れてため息をついた。
 術で影を縫いつけて動けなくした弟子たちは、必死になって読むなと叫んでいる。例外はアミュだ。彼女の日記の内容もどうかと思うが、本人は悪気はないようだ。
 今、なぜこんな事をしているのか。
 それは最近、弟子たちが一人歩きしすぎているように感じたから。ハウルは時折血の匂いをさせているし、ラァスはどこからか宝石やそれを買う資金を手に入れている。メディアはカオスも教えていないと言うような禁術を使う。アミュは、これはまあいいのだが、凶悪な魔物と森の中で遊んでいる。そんな弟子たちの本心と秘密を知りたくて、こんな強行に出たのだが……。
「外出と無許可に本を閲覧する事を禁止します。依頼人を私に許可をとらずに追い返すこともです。ハウル、いくらそこらへんにころがっていても、あの城にあるものは人間から見れば至宝です。盗んで売り払ってはいけません。アミュ、森には本当に危ない魔物もいますから、遊ぶなら道で遊びなさい。あと、誰が妖怪ですか。罰として、アミュ以外一時間そのまま」
 宣言すると、弟子たちは不平不満を漏らす。
 ──甘やかし過ぎましたか。
 これからは、びしびしと行こう。
 そう誓うヴェノムだった。

 

 

 

 あとがき

 祝NovelSearch1位ランクインの記念品です。弟子たちの赤裸々な本性やその生活実態をお送りしました。
 いつも以上にお遊び話なので、ここにあとがきを。
 そういえば、日記の順番、人気順にもなっているような……。日記の中身については、日付はバラバラです。どれがどれぐらいの時期のものかは不明。一部探せば分かるようなものもありますが。
 ラァスの……は気にしないで下さい。私はウサギとハリネズミが好きです。

 凶悪なハウル。やっぱり犯罪者の道を行くラァス。ボケたアミュ。将来不安なメディア。というのがコンセプトでした。
 アミュ以外犯罪者ばかり。これでいいのか子供たち!? な感じですね。

back