赤いコートの男再び

 今日のハウルは忙しそうだった。都会ではちょっとしたパーティをする日なのだが、彼の場合は部屋にトラップを仕掛けたりと、何かが攻めてくるような様子だった。
「あんた、何か来るの?」
「今年こそ、サン・タクロースを捕獲するんだ!」
 アヴェンダは彼の子供じみた発言にげんなりして額を抑えた。
「あんた馬鹿でしょ」
「なんでっ?」
「そんなばかげたおとぎ話信じてるわけ?」
 夜な夜なプレゼントを配る赤い服の男など、今時子供でも信じていない。
「馬鹿はお前だ。サンタクロースってのは、実在の人物をモデルとした話だぞ。実際に赤い服来て子供にプレゼントを配る男はいる!」
「それ、先生が枕元にプレゼント置いてるだけじゃないの?」
「違う! サン・タクロース。正式名称死に神配下四級神、水子の案内人『サン』だ!」
「…………長い正式名称ね」
「サンが正式名称だ。役割は違うかもしれねー。んまぁ、子供が好きな神様で、純粋に信じている子供のところを優先的に欲しい物を与えて回ってるんだ」
「あんた純粋なわけ?」
「俺は心から信じてるから! いっつも眠らされるんだ」
「へぇ、あっそ」
 正直、馬鹿の妄想には付き合っていられない。
「去年はラァスだけ本人に合ったぞ。あいつは術が効きにくいし眠りが浅いから。サンの存在はラァスが証明だ! ちなみにでっかい宝石もらってたからな」
「ちっ、仕方ないからあたしも付き合ってあげるよ」
「お前、ラァスの名前が出るところっと態度変わるな」
「ラァスが言うんなら信じるのは当たり前だろ。あんたと違ってしっかりしてるからね」
「失礼な奴だな」
 ハウルはまた一つ新たな罠を仕掛け、次の罠に取りかかる。その様子を眺めていたキーディアは、ハウルへと問いかけた。
「ハウルさんはサン様を捕まえるの?」
「なんだ、お前はサンを知ってるのか」
「はい。サン様は死神様の配下だから、死霊術師としてはお名前ぐらいは」
「そっか。お前は偉いなぁ」
 ハウルはキーディアの頭をなでまわす。彼女が引きずる剣が怪しく光るが、彼はいっこうに気にしない。
「でも、捕まえてどうするの?」
「礼を言う」
「お礼を言うのに、捕まえるの?」
「あいつ、絶対に姿を見せないんだ。だから、捕獲するしかないだろ? 死神のところはなかなか行けるところじゃねーし。去年も失敗したが、今年はやり遂げてみせる!」
 彼は珍しく熱かった。いつもはどこか冷めているのだが、今の彼はまるで好きなヒーローについて語る小さな子供である。
「すまないね。彼はサン様が大好きだから。あの方がいなければ、彼は栄養面で偏って、こんなに大きくなれなかっただろうからね」
 ラフィニアをかかえたカロンが、慣れた様子で言う。
 一体、ハウルの幼い頃に何があったのだろうか。
「ラフィも今年は何がもらえるか楽しみだな。三人とももらえると思うから、楽しみにしているといい」
 姿を見る気も捕獲する気もないカロンは、ラフィニアに何度もキスをしている。ラフィニアは小さなぬいぐるみを抱えてきゃたきゃた笑っていた。
「どうでもいいけど、ハウルあんた、まだ子供のつもりなの?」
「…………だ、だって仕方ないだろ! 十年チャレンジしたけどダメだっんだから!」
「大人になって夢追い続けるだめオヤジかいあんたは」
「ほっとけ!」
 ハウルは工具を抱えてどこかへ走り去る。しばらくすると、さらなる道具を持って帰ってくるのだが、それを見た時には呆れて皆部屋に戻っていった。


「ラフィ、今夜はみんな一緒だぞ」
 ハウルがラフィニアを抱いて、輝かんばかりの笑顔で言う。
 アヴェンダは不覚にも一瞬目が奪われ、そんな自分に気づき舌打ちする。なぜここの連中はみな人間離れしているのだろうか。ラァスも去年は大変だったに違いない。
 ハウルは罠と共に、皆の分の寝床を作っていたらしく、人数分の枕まで用意してある周到さだった。安全のため、部屋への出入りは窓から行った。この男の場合変な心配はないからいいのだが、普通年頃の女の子を自分と同じ部屋で寝かせようと思うのだろう。普通許されるのは、赤ん坊のラフィニアと、まだ胸のふくらみもほとんどないキーディアまでではないだろうか。ヒルトアリスなどはそんな心配など全く気にしていないらしく、いつのどおりネグリジェを着ているほど無警戒ぶりなのだが、そんな彼女も彼女である。心配している彼女が自意識過剰な気すらしてくるのだが、きっとこの感覚に陥ったら女としては終わりだろう。
「ああ、馬鹿馬鹿しい」
「んだ。ラァスと同じ目に遭いたくないのか?」
「その言い方は変だよ」
「……ん……まぁ、気にすんな」
 彼はなんてアバウトな男だろうか。彼らの前で悩むのが、非情に馬鹿らしくなり彼女はベッドに横になる。
「ああ、寝よ寝よ! もしもいるなら、あたしゃ最新のはかりがいいね!」
「私は武器が欲しいです」
「私は素敵な死霊が欲しい」
 キーディアは剣を抱きしめため息をつく。彼女は寝る時も肌身離さず持っているようだ。ぬいぐるみを抱くようにして、剣を抱いて眠っているらしい。彼女にとっては一切の重さを感じない剣であるからこそ可能なのだろう。
「くれるのは物だけだぞ、キーディア。死霊は欲しいと言ってくれるもんじゃないだろ。奴らにも人格があるんだから」
「そう……だね。ごめんなさい」
「でもきっと、いい物をくれるから期待してろ」
「うん」
 キーディアは小さく頷き、ハウルの座るベッドに入る。ベッドと言っても、木の板の上にマットレスを隙間なく置いてシーツを敷いただけのもので、雑魚寝とかわらない。
 アヴェンダはハウルとは逆方向の端に横になっていて、隣にはヒルトアリスがいる。じっと見つめられるのさえ気にしなければ、十分に熟睡できる。ヒルトアリスのこれにはすでに慣れた。
「ハウルは寝ないの?」
「俺は起きてる。キーディアはお休み。んでおめぇらは寝るなよ」
 寝る気でいたアヴェンダは、ハウルの言葉に目を開く。
「なんで」
「眠ったら負けだぞ」
「あたしは別に勝つつもりなんてないよ」
「ラァスは起きてたぞ。お前も起きてたら、共通の話題だ」
 ハウルがよく眠るというわけではない。彼は必要とあれば数日眠らなくても動き回れる体質だ。それが眠ってしまうのだから、何らかの干渉を受けたと言うことだ。神が呼ぶ眠りに、ラァスは打ち勝った。勝つとはそういう意味で、だろう。
「ちぃ」
 試してみるのも悪くない。
 考えを巡らせていると、横になっていたキーディアが起きあがる。
「じゃあ、やっぱり私も起きてていい? 私もサン様にお会いしてみたい」
「キーディア……そうだな。お前も一緒に起きてるか」
「うん」
 ハウルはキーディアの頭をしつこく撫でて大量に持ち込んだクッションを背に置いてやる。彼女はそれにもたれかかり、剣を傍らに置いた。それでも手だけは常に添えている。彼女は仮にも死霊術師だ。死神配下の神とつながりを持たせてやれれば、彼女の将来のためになる。ハウルはどうでもいいが、彼女の小さな夢は叶えてやりたい。
「仕方ない。とっておきの気付け薬を作ろうか」
「お、やる気になったか」
「あんたじゃまた眠らされるのがオチだろう。人間には、知恵と道具があるって事、神様にも分からせてやせなきゃあねぇ」
 アヴェンダは不敵に笑う。
 その試練を乗り越えれば、それはラァスの耳にも入るだろう。腕の見せ所だ。



 月明かりが暗い地上へと仄かな優しい光を振りまく、なんとも心地よく眠れそうな夜の日だった。
 そんな夜空を眺めながら飲むワインはまた格別である。
「ヴェノム殿、今年はハウル君の念願は叶うのだろうか」
 カロンは紙にペンを走らせるヴェノムに声をかけた。彼女は様々な商売を手がけており、そのほとんどを他人に委託しているが、それでも手を出す部ところには出している。その関係で何か文章を作成しているらしい。
「さあ。彼は魔法耐性が人間のラァスよりも劣りますから、どうでしょうか。大きくなってずいぶんと良くなったとは思うのですが」
 ヴェノムは手を止めて、小さく息をつき立ち上がる。
「殿下、私にも一杯」
「だめだだめだだめだ!」
「なぜそれほどまでに……」
 彼女は自分の酒乱を自覚していないのだろうか。一杯ならいいと思っているのかも知れないが、少しでも酔う要因はなくした方がいい。彼女はいつもと変わらぬ様子でキス魔と化すのだ。それだけならまだいいのだが、その後万が一ハウルに知れたらと思うと、己のためにこそ阻止せねばならないと本能が告げてくるのだ。
「それはともかくヴェノム殿。そろそろいらっしゃるのではないだろうか」
「そうですね。迎えに行きましょうか」
 ヴェノムは立ち上がり、明かりを手にして歩き出す。この方向にあるのは玄関だ。
「……サン様は、玄関から?」
「煙突から入ってくるとでも思いましたか? この屋敷には結界があり、下手な進入方法をとると防犯装置が作動します」
「そんなものがあるのか?」
「はい。ウェイゼル様対策です。ですから、皆玄関から来るでしょう?」
「皆礼儀正しいだけかと思っていた」
「サン様は礼儀正しい方だからというのもあります」
 その判断基準は人徳というものだろうか。カロンはヴェノムのあとについて歩く。今頃ハウルは、皆と仲良くおしゃべりでもしているだろうか。十五歳にもなって、女の子達と一緒に寝るという発想自体が、彼の中にある幼稚さを語っている。今年は女の子ばかりだから、一人浮いている可能性もある。そのあたりを、彼はどう思っているのだろうか。
 玄関に到着し、ヴェノムは足を止め目を伏せた。しばらくすると彼女は扉を開き、その前にやってきた者を招き入れる。
「いらっしゃいませ、サン様」
 赤いコートを着た男が部屋に入ってくる。足下には彼の僕である大きな細身の犬がいた。犬は玄関の外に座り、主人を見送る。
「おじゃまする。子供達は……また起きているのか?」
「ええ。待ちかまえています」
「まったく……お前のところの子供はいつもそうだな」
「申し訳ありません。いつも我の強い子ばかりが集まって……」
 彼女は常にあのようなメンバーを相手取っていたのだろうか。
「ハウルはいつになったら諦めるのだろうか」
「一度でもお話しできれば諦めるのでしょう」
「カオス達以来のしつこさだな」
 このときカロンは『ああ、壮大な歴史を感じる』などと思った。カオス達が二百年以上前の生まれなのだから、その間には様々なことがあっただろう。馬鹿なことをしていたのはハウル一人ではなかったのだ。
「きっと、成人してもあなたが来る限りは子供達に混じっていると思いますが」
「…………まあいい。行ってくる」
 彼が決心するまでに微妙な間があったのだが、何を思っていたのだろうか。
「いってらっしゃいませ」
 ヴェノムは手を振って見送る。そして姿が見えなくなると、小さくあくびをした。
「寝ましょうか」
「そうだな」
 起きていても仕方がない。明日の朝、ラフィニア迎えに行った時に結果を聞けばいい。


 足音が響く。神だからと言って、足音も立てない歩き方をするわけではない。ここにこうしている以上、音は出るし、封じていなければ漏れるのは当然。
 そして部屋の中からも息づかいが聞こえる。
 寝ているのか寝ていないのか、判断がつかない。
 足音が部屋の前に来てしばしの時が流れ、やがて意を決したように扉が開かれる。月明かりのため明るい部屋から、暗い廊下に向かって光が差し込み、彼は目を細めた。
 罠を警戒して足下を気にしながら、彼は進む。
 子供達は仲良く並んで眠っていた。それを見て彼はつぶやく。
「眠ったか」
 安心してゆっくりと足を踏み出す。いくつか仕掛けられた罠はすべて見抜き、ベッドの脇までやってきた。眠る子供達の顔を覗き込むと、彼はじっと見つめた。子供好きというのは本当のようだ。
「またハウル以外が入れ替わっているな」
 彼はラフィニアに手を伸ばし……その手首が、がしりと強く掴まれた。彼は驚き身を引こうとしたが、掴んだ手はそれを許さない。
「ああ、捕まえたっ」
 ハウルは感涙にむせび、サンはさらに驚く。
「眠ったのでは……」
「いや、みんな起きてる」
 ハウルがそういった頃、皆は身を起こす。アヴェンダは傍らの燭台に明かりをともし、サンの顔をよく見た。
 まるで雪のように色が白く、鋭さを感じる顔立ちをしている。聞いていた通り、赤いコートを身につけている。容姿からは死神配下という雰囲気を感じられたが、子供が好きという雰囲気はなかった。
「ほ、本物のサン様……」
 キーディアはうっとりと眺めた後、ぺこりと頭を下げた。
「お前、その剣」
「彼は関係ありません。これは薬の力ですから」
 キーディアは剣を抱えて、アヴェンダを振り返る。
「……アヴェンダ?」
「何よ。何であたしを知ってるのよ」
「ああ……彼女の子孫か」
 そんな昔からここに通っているらしい。年を取らないのが神だが、その辺りはねたましい。
「今おそらく……八十歳ぐらいのアヴェンダは元気にしているか?」
「女の歳のことに触れんじゃないよ」
「ああ、すまない。同じ名前が多い家系だから、特定の人物を言い表す時に困るんだ」
 それに関してはアヴェンダ自身が一番感じていることだ。村で大人は彼女をチビと呼ぶ者もいた。好きで小さいのではない。数年前から縦の成長がほとんど止まってしまったのだ。
「雰囲気がとても似ているな。一目で身内と分かった」
「ああっ、そう。ところでハウル、しがみつくのはやめときな! みっともないよ! たぶん今更逃げないから」
 彼にしがみついていたハウルは、アヴェンダに言われて身を離した。そして、ようやく初めて彼の顔を見る。彼はヒルトアリスでもないのに泣いている。泣きに泣いている。
「サン……そんな顔してたんだな」
「…………」
 その涙で前が見えているのだろうか。
「やっぱり男前だな。うん、格好いい!」
「…………」
 意味もなく何度も頷く様は、まるで酔っぱらいのようだ。
「ああ、なんて言っていいのか……」
 ハウルは憧れの人と初めて話す少女のように、支離滅裂な言葉を発し続けた。興奮しているらしく、顔が赤い。サンはため息をついて、彼の肩に手を置いた。
「言いたいことはいろいろあるが……大きくなったな」
「ああ」
「プレゼントをやろう」
「あ、ありがとう」
 ハウルが手を差し出すと、彼はどこからか一振りの長剣を取り出した。
「…………これは?」
「お前は大きくなったから、これで最後のつもりだ。だから趣向を変えた」
 ハウルはそれを見て首をひねる。
「変な感じの力を感じるけど」
「不殺の剣だ。斬りつけても致命傷を与えることのないものだ。これからは力がますだろう。殺さぬ武器は役に立つ。だからターラ様にいただいてきた」
「死神に!?」
 ハウルは剣を取り落としかけ、慌てて抱き抱えた。呆然とした表情で、サンを見つめる。彼の涙はどこかに引っ込んでいた。
「娘達、何かリクエストがあれば言え」
 その言葉にアヴェンダとヒルトアリスは顔を見合わせる。これはこの努力のご褒美だろう。
「私は何か剣が……」
「顕微鏡」
 なんでもくれるのなら、高いものを頼んでおいた方がいい。
 サンはひたすら彼を見つめるキーディアにも顔を向けた。
「何がいい?」
「握手してください」
 彼は戸惑いつつも言われるがままに握手する。それから再度問う。
「何がいい?」
「え?」
「何か欲しいものはないのか?」
 握手してもらった手を嬉しそうに握りしめていたキーディアは、呆けた声を出す。
「握手して頂きましたから、十分です。物なら、自分で買えますから」
 彼は物には一切不自由していないキーディアを見て、それから彼女の額に手を伸ばす。
「では、何か困ったことがあれば私を呼ぶといい。その剣を扱えるなら、私の力も扱えるだろう」
 キーディアは首をかしげサンを見上げ続けた。サンは最後の一人、ラフィニアの枕元に大きな竜の形をしたぬいぐるみを置く。
 そして彼は言葉もなくドアへと向かった。彼の仕事はこれからだろう。一カ所にとどまってはいられない。
「あ……サン!」
 ハウルが部屋を出た彼に声をかける。
「今までありがとう! 本当に感謝してる!」
 サンは足を止め、顔だけこちらに向けた。
「子供がいるかぎりは、来年も来る」
 そう言って、唇を笑みにし去っていった。
 アヴェンダ達へのプレゼントは、いつの間にかベッドの脇に置いてあった。


 朝、起きてきたラフィニアは、大きなぬいぐるみを抱えていた。白い竜のぬいぐるみで、手足がぱたぱたと動いている。
「あら、可愛いぬいぐるみじゃないですか。これでルートも楽になりますね」
 エプロンを外しかけていたヴェノムは、喜ぶ子供達を見て満足そうに頷く。
 そのラフィニアを抱えるヒルトアリスは、見慣れぬ剣を手にしていた。一緒に歩いてくるキーディアは額に触れては首をかしげていた。
「ラフィニアさん、パパに自慢してきてくださいね」
「ヒルト、パパじゃあないよ」
「ああ、お兄様でした。申し訳ありません」
「いいんだけどね」
 ラフィニアはぬいぐるみを抱えて飛んでくる。腕の中に収まった彼女は、機械仕掛けのぬいぐるみを抱いているにしては軽い。触れてみると、それは綿の感触しかない。
「…………神のプレゼントは、理解できないな。ところでアヴェンダちゃんは?」
「お部屋にもらった顕微鏡を飾りに戻ってます」
 顕微鏡ぐらい、言えば貸したのだが、自分の物が欲しかったのかも知れない。
「ハウル君は?」
「もらった剣を眺めてます。あこがれていた死神様から直接頂いて、大喜びされていますわ」
「ああ、起きていられたんだね」
 念願叶った彼を頃の中で祝福する。しかしカロンが発したその言葉に、ヒルトアリスは固まった。
「どうかしたのか?」
「……実は薬を使ったんです」
「そうか。アヴェンダちゃんか」
「だから私たち、これから数日間一睡もできないそうなんです」
「…………は?」
 カロンは愕然となり、ラフィニアを見た。
「あ、ラフィには何も」
 その言葉にカロンは安堵し、ラフィニアに頬を寄せた。
 それぐらいの薬を使わなければ、起きていられなかったのだろう。副作用がなければいいが。
「それでお願いがあります」
「何なりと」
「実は数日後、私たちは突然眠ってしまう可能性が高くて、しかも起きていた時間分眠るそうなので、その時はベッドにまで運んで頂けたら……と」
 お恥ずかしいと言うヒルトアリスは、頬を種に染め身をよじる。
 それで脳は休憩できるのだろうか。健康には問題ないのだろうか。
 そんなことを考えながら、は執念の徹夜慣行をした彼らに対して、ある種の尊敬の念を抱いた。カロンならそこまではしないだろうから。


 

あとがき
 クリスマス番外編サン再び。
 ついにハウルは大人になりました!
 ラフィの新たなお友達もできました!
 以上!
 

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