第3回人気投票御礼おまけ
シンデレラ(白夜城パロ仕立てほら吹き風)

 

 日記のおまけをさらに馬鹿馬鹿しく、かつ引き伸ばしにしたような物語とも言えないシンデレラパロです。
 始めに、この先何があっても苦情は受け付けません。
 それでもよろしければ先へお進みください。

 

 

 

「慶子、しんでーあって何?」
 可愛い天使のフィオ小首をかしげた。
「し……しんでーあ?」
 それを聞いた慶子は風呂上りの慶子も首をかしげた。
「シンデーアって何?」
 仕方なく今まで無視し続けていた、最近毎日のようにやって来ては夕飯を食べて風呂に入っていき、最悪泊まっていく幼馴染の大樹に尋ねる。
「ああ、さっきアニメでシンデレラがどうこう言ってたから、それじゃない」
 慶子は冷蔵庫からうんと冷やした高い酒を持ってカーペットの上に胡坐をかくと、期待してフィオは彼女を見つめた。
「あ、今回は俺にやらせて」
 大樹が挙手をして名乗り上げたので、慶子はどうぞと言ってやった。


 昔々あるところに、一人のそれはそれは美しい娘がいました。
 娘はシンデレラ(灰被り姫)と呼ばれていました。幼い頃に母に先立たれ、やがて父親がタチの悪い女と再婚してしまいました。美しい妻の虜となったディオルという男は、実の娘よりも、妻の言うことを何でも聞く、いいところパシリか奴隷状態でした。
 可哀想なシンデレラは、優雅な生活から一転し、継母とイジワルな姉二人に虐められ、父からは忘れられる日々を過ごすこととなりました。
「お掃除終わりました」
 赤い瞳に鉄皮面。まるで幽鬼かヴァンパイアのような、しかし美しいシンデレラは継母と姉達に申告しました。ちなみにシンデレラの忘れられた本名はヴェノムと言います。
「何を言うのシンデレラ! ここ! ここ汚い!」
 美鈴という名のシンデレラよりも年下でけどとにかく姉である美少女が言いました。今回は悪役という事で、大層機嫌が悪いのですが、投票してもらっただけマシでしょう。
「えと……シンデレラ。洗濯は終わったのかよ……って、なんで俺が女装して女の人にこんな事をっ」
 自らの配役に文句を言うのは、冥王の位を持つ女装に違和感のないまだ幼さを残す少年ヨル。年下で少年ですが、姉は姉です。
「そのようなことよりも、私の可愛い娘達。今夜はお城の舞踏会ですわ。いい男ゲットしていらっしゃいませ! 第一候補は王子様ですわ、王子様!」
 気合の入っているのは、持ち前の美貌と被った猫により玉の輿になり、そして夫を尻に敷く魔性の女、シンデレラの継母ことシアです。
「シンデレラ。貴女は私の可愛い娘達の仕度を手伝いなさい。それが終わったら洗濯です」
 シンデレラの継母はシンデレラをとても嫌っていました。大切な兄をとんでもない人間にしてくれたというのもありますが、可愛い娘達よりも何でも完璧にこなすもので、やっぱりとにかく無性に虫が好かなかったのです。相性が悪いものですから、虐め方には容赦がありませんでした。
「灰を被った醜い娘。貴女は家事でもしながら待っているとよろしいですわ。おーほほほほほほほほっ」
 悪役という事で、嬉々として苛め抜いている妻に、シンデレラの父は言いました。
「シアさんの笑い声はまるで小鳥のさえずりのようだ。ああ、今日も女神のように美しいよ」
 恋は盲目です。盲目過ぎて他のことなど目に入りません。父を生暖かい目で見守りながら、心優しいシンデレラは姉達の手伝いをしました。
 姉達が行ってしまうと、シンデレラは庭に出ました。
「ああ、お城の舞踏会にはきっと素晴らしい料理の数々があるでしょうに。レシピだけでも貰ってくるように頼んでおけばよかった」
 家事が大好きなシンデレラは、舞踏会よりも何よりも、料理のレシピを思い涙しました。無表情なのでとても怖いです。今は夜。誰が見ても心霊現象でしたが、幸いにもここには誰もいません。
 シンデレラは涙を拭い、明日の仕込みをしに戻ろうとしたその時です。
「お待ちなさい、シンデレラ」
 若い娘の声が響き渡りました。シンデレラが振り向くと、そこには二人の少女が、とんがり帽子と妙に可愛いミニスカローブを身にまとい、珍妙なステッキを掲げていました。何のコスプレだろうと首をかしげるシンデレラの前で、二人の少女は名乗りを上げました。
「私達は双子の見習い魔女メディアとアミュ」
「ええと……ちょっと実験に付き合ってもらえると……嬉しいです」
 一人は堂々と、一人はもじもじと。とにかく大変可愛らしいというか、派手な紫と赤というウケ狙いな衣装をした美少女達でした。
「双子……ですか?」
「二卵性なのよ」
 二人は似ても似つきません。方や黒髪に藍色の瞳。方や赤毛に赤い瞳です。どうやったら双子なのかとツッコミ満載ですが、大人なシンデレラはそれ以上追及しませんでした。
「そうですか。でそのイカれつつも可愛い魔女さんたちが私に何か御用ですか? よかったらお茶でもご一緒にどうですか?」
「あら、ありがと……って、違う!」
 小さな……いや紫の魔女が首を振って否定しました。
「いいこと。私達は変身の術の練習をしたいから、ちょっと付き合いなさい」
「あのね、そこでしらないおばさんがお願いって」
「アミュ! それは言わないの!」
「そうなの? ごめんなさい……」
 シンデレラは二人の少女を見ていると、切なくなるほど二人が可愛くて仕方なくなりました。だから決めたのです。
「じゃあ、練習しましょうか」
「ええ!」
「うん」
 可愛い魔女たちは笑顔で同時に頷きました。
「じゃあ、まずはハツカネズミ六匹と、ドブネズミ一匹、トカゲを六匹。あとカボチャを持ってきて」
「はいはい」
 シンデレラは二人のために言われたものを集めました。
「まずはかぼちゃね」
 紫の魔女は杖を構えもせずに呪文を唱えました。
「テク(自主規制)ャンラ〜」
 何のための杖なのかという突っ込みを飲み込むシンデレラの前で、光に当たったかぼちゃは見事な馬車に変わりました。
「さ、次は馬と御者ね。出しな……」
 言われるまでもなく気を聞かせて箱に入れたそれを差し出すと、瞬間、紫の魔女が卒倒してしまいました。
「ああ、メディアちゃん!?」
「あらまあ」
「そういえば、ネズミ嫌いだったね。じゃあネズミは私が……」
 赤の魔女は今度はちゃんと魔法のステッキを振り回しました。意味もなくぶんぶんと全身を使って振り回しています。
「ええと……ぴーり(やっぱり自主規制)るとぉ」
 魔女っ子風呪文を唱えると、ステッキでネズミ達を指し示しました。
 するとどうでしょう。
 六匹のハツカネズミが変形合体し、一匹の白竜へと変わりました。そしてドブネズミは、金髪金目のそれはそれは愛らしい少女のような美少年へと膨張変身しました。
「馬のルートで〜す」
 白竜が言いました。
「御者のラァスで〜す」
 金目の美少年が言いました。なぜか派手な金色の燕尾服を身につけています。
「……今……」
 ものすごいものを見てしまったような気がしたシンデレラですが、赤い魔女の不安げな表情を見て何事もないように振舞いました。幸いにもシンデレラは誰が何をしようが矯正不可な鉄皮面です。表情にも態度にも微塵も不満どころか喜びすら表さずに言いました。
「すごいですね」
 シンデレラは自らが不器用な事をよく知っているので、魔女の頭をなでなでしました。赤い魔女は白い頬を朱に染めうつむきました。
「アミュ可愛い〜。衣装は似合うし可愛いけど、キャラは合ってないよね。もっとはっちゃけた性格じゃないと……」
 二人は知り合いのようで手を取り合いました。正確には、御者が魔女の手を無理矢理取って振り回しただけです。
「じゃあ、このネズミさんたちも片付けなきゃ」
 赤い魔女は再び杖を振り回して呪文を唱えました。するとどうでしょう。今度は変形も融合もせず、ごく普通に変身しました。ただ、その衣装は御者と同じデザインで、それぞれ違う色をしていました。ただ、うち二人だけ例外で、一人は猫耳に肉球、頭に鈴をつけたメイド服。そして一人はウサミミに仮面の少女達です。
「…………」
 シンデレラは言葉もありません。さすがにその異様な集団を見て、ここにいてもいいのかと迷い始めました。
「やあ、ラァス君。奇遇だね」
 黄色の燕尾服を着た青年が言いました。カロンという変態です。その背中には淡いピンクの燕尾服を着た愛らしい天使がいました。
「ラフィ可愛いねぇ」
「そうだろう。可愛いだろう。私もスタンバイしているときに可愛くて可愛くて皆に自慢して回ったんだ」
「……君、親馬鹿入ってるよねぇ……」
 その時です。突然紫の魔女が起き上がり、その集団を見て叫びました。
「あんたたち何なの!? 何なのよ!? その異様な姿は!?」
 驚くのも無理はありません。目覚めた直後にこのように異様な光景を見れば誰とて当然驚きます。
「ほら、あれだよ。今度こそ戦隊物やりたかったんだって。本当はぴったりしたボディスーツ着て、何とか戦隊何レンジャーとかポーズとらせたかったらしいけど、ここにいる人たちノリ悪いし僕ら従者だし、とりあえずおそろいで色だけ変えてみたそーだよ。決めポーズとる? 一人赤ん坊だから無理かもしれないけど」
「やめなさい」
 紫の魔女は一同を見回しました。
 猫耳。悪霊引き連れた仮面ウサギ。銀の燕尾服を着こなすどこか青ざめた背に黒い背のある長身の青年。黄色男。天使。そして女男の金色野郎。
「アミュ、もう少しマシなのはいなかったの?」
「でも、ここで人数調整しないと」
「ああ、そう」
 紫の魔女はがくりと肩を落としました。
「カーティス閣下、元気出してね。陛下もきっと許してくれるよ」
「お前はいいだろうな。その姿をお見せすればそれで」
「竜王様も許してくれるよ」
「お前はいいだろうな、冥王様の背後に隠れればそれで」
 話し合う猫耳とシルバーは、きっと何か深い事情があるのでしょう。
「……ああ、もうなんでもいいから。とにかく、行くわよ!」
「しかし、私は年代物の黒いドレスしかありませんが」
 シンデレラは薄汚れた黒のワンピースを身につけていました。エプロンも薄汚れて灰色です。
「そう。じゃあ金色のドレスを」
「黒がいいです」
「く、黒?」
「それ以外は着ません」
「……仕方ないわね」
 シンデレラは喪服のような黒いドレスを着せられて、無言で正体不明の馬車に乗りました。
 色とりどりな、そして異様な集団に囲まれて、シンデレラはほんの少し帰って掃除して眠りたいと思いましたが、魔女達に悪いので口にしませんでした。

 シンデレラ達が城へとつくと、当然とても目立ちました。目立つどころではありませんが、シンデレラはこういった変な連中にはなれていたので、慌てず騒がず落ち着いていました。心の奥底ではとても恥ずかしかったのですが、もちろん顔にはまったく出ていません。
 人々は異様な色をした彼らが、よくよく見れば美しい者が混じっていることに気付きました。もちろんどれほど見た目がよくても、その異様な集団を受け入れることなど出来ません。人々は彼らを避け、彼らが進む先に勝手に道が出来ました。
「サディ、どうでもいいから離しなさい。ったく、なんで私までこんなところに来なきゃならないの?」
 逃げ出そうとした紫の魔女は、仮面の少女に服をがっしりと捕まれ、しぶしぶとここにいます。
「ところで、私は何をすればいいんでしょうか」
 目的の一切ないシンデレラは魔女たちに尋ねました。魔女たちはぎょっとして考え込みました。
「ええと、ええとぉ」
「ああ……とぉ。やっぱり王子を見て行きましょう」
 紫の魔女は投げやりに言いました。目的もなく観光に来ると、ついどうでもいいが有名なものを見てしまうのです。
「さて……王子は……」
 紫の魔女は一点を見て絶句しました。いや、魔女だけではありません。一同絶句し、しばらくすると耐えられずに指を指して爆笑しました。
「馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だぁ!」
「ぷ……」
「あはははははははっ」
 誰が何を言っているかがわからないほど、彼らは腹を抱えてあらん限りの声で大爆笑しています。あのシンデレラすら、口元を手で覆い瞬きもせずにそれを見つめています。同じく滅多なことでは動じないシルバーは腹を抱えて蹲っていました。
「笑うなてめぇらぁぁぁあ!」
 その物体はなんと王子様でした。青みがかった銀髪に、空色の瞳の美少年です。ただしその服装はといえば、キラキラ輝く青。そして背中にくじゃくのように広がった羽を背負っていました。まるで舞台の上でスポットライトを浴びるためにあるかのような衣装です。
「俺だってなぁ、俺だってなぁ、好きでこんなかっこうしてるんじゃねぇぇぇえっ!!!」
 王子様は恥ずかしさのあまり叫びました。
「ハウル何!? 何の仮装なのそれ!?」
「知るかよっ! 塚が何とか女だったら完璧だの何だの言ってたけど、俺に理解できるかっ」
「うわ化粧してる濃ゆいキモイ」
 ゴールドと王子様が漫才を始めました。
「お前だって変だぞ」
「僕は司会者とか言われればまだ普通に通るし今は従者! 舞台でもないのにそんな衣装着てる君とは違うもーん」
「うがぁぁぁあ!」
 二人は実は大の仲良しでした。それを見て、シンデレラは可愛いと思いながら心の中で微笑みました。顔はやはり怖いままです。
「ところで、あの喪服女は」
「シンデレラさん。君の好みだろ」
「あ、アホかっ」
「紹介してあげようか?」
「い、いらんわっ」
 勝手に仲を取り持とうとするゴールドに、赤くなった王子様が言いました。
「そうです。お前にはこの美女はもったいない」
 突然現れた王子様によく似た男が、シンデレラの肩を抱きました。あまりに突然にことで、シンデレラは反射的にその顔面に裏拳を叩き込んでしまいました。
「あ、王様」
「まあ、これが王様」
 シンデレラは顔面を押さえる王様を凝視しました。
「普通ですね」
「はい普通ですよ。当然じゃないですか。僕を誰だと思っているんですか?
 それよりもシンデレラとやら。あちらでゆっくりと話しませんか? 夜明けまで」
「無理です。十二時が門限なので」
「ならばその時まで」
「いえ、私はただの観光なので遠慮します。それよりも、あちらで少女が全身から殺意を放ってあなたを見ていますが」
「げっ」
 うめいたと思うと、王様は出てきたときと同じように、突然姿を消しました。
「すげぇ」
 それを見た王子様はなぜか感涙してシンデレラを見ました。
「どうしたのですか? なぜ泣いているのですか?」
「あのオヤジを殴っていとも簡単に追い払うなんて……頼む。頼むからここにいてくれっ」
「困ります」
「そう言わずに」
 シンデレラはねだられ、魔女たちを見ました。
「帰りましょう」
「……そうね。危険人物がいるって分かったし。課題は終わったし」
「んじゃ、者ども撤収ぅ!」
 ゴールドが言うと、皆風のように駆け出しました。
「ああ、待てっ」
 王子様はシンデレラを追いました。
「追ってきますよ」
「大丈夫」
 赤い魔女は言うと、背後に油を撒き散らしました。
「……アミュってば大胆さん」
「階段の前に足止めしないと、落ちる人がいそうだったから」
 (基本的には)心優しい赤い魔女は、背後を心配しつつも箒に乗って飛びんでいました。
「逃がすかっ!」
 皆がすべって転ぶ中、一人空を飛べる執念深い王子様が追ってきました。
「仕方ありませんね」
 シンデレラはガラスの靴を脱いだかと思うと、王子様の顔面めがけて投げつけました。ヒールなので大変痛いはずです。案の定撃ち落されて悶絶しています。
「さ、今のうちに」
 時々無常なシンデレラは、馬車に飛び乗るとすぐさま出発しました。馬が空を飛べるので、あっという間にお屋敷でした。
「それじゃあ私たちは帰るわ」
「さようなら」
「わけの分からない一時をありがとうございました。また遊びに来てください」
 子供好きなシンデレラは、子供達に手を振って見送りました。シンデレラは部屋に戻るとドレスを脱いぎました。片方残ったガラスの靴は、仕方なく棚の上に置きました。
「さて、明日の仕込みを」
 シンデレラは料理をしているのが一番幸せなのでした。

 その頃王子様は。
「ああ、理想の人。なぜ逃げやがったのだろうか?」
「追いかけたからでしょう」
 王妃様にお仕置きされて帰ってきた王様が言いました。へんな痣がありますが、夫婦の甘い営みではつきようもない種類のものでした。
「探すんですか?」
「ああ。あんな目立つ集団だ。すぐに見つかる」
「あんな目立つ集団が普段からいれば、誰かが知っているでしょう」
 王様の言葉に王子様は考え込みました。親友のゴールドは住みか不明。普段は普通の格好をしている。変装名人の弟子。
「……目立ちすぎてかえって特徴をなくしているのか……」
 王子様はちぃと舌打ちしました。
「手がかりはこの靴か。ちいせぇ足だな。よし。これがぴったりはまる女を探し出して来い! 全員だ!」
「黒髪の女性でなくてもいいのですか?」
 王様の最もな意見に王子様はあからさまな反発を見せました。
「仮装行列だぞ。髪の色を変えてるかもしれないだろ。とにかく、怪しい女はしらみつぶしだ」
「見つけてどうするんですか?」
「もちろん、弟子入りする」
「……相変わらず弟子入りしたがりですねぇ。何が楽しいのやら」
「おら、てめぇら! この靴の型を取れっ!」
 王子様は王子様とは程遠い汚らしい言葉で家臣たちに命じました。

 翌日、イジワルな継母は大はしゃぎしていました。
「どうなさったのですか?」
 シンデレラは昼食をの皿を並べながら言いました。今日の昼食はスープにはヴィシソワーズ、前菜にはワカサギのエスカベッシュ(揚げてワインやビネガーやオイルにつけたもの)。ピーマンと鶏肉のファルシ(通称、ピーマンの肉詰め)。カイユ(うずら)のロースト。育てていたカイユをエトフェ(針刺して仮死状態にして殺す)するとき、シンデレラはとても胸を痛めましたが、そろそろ廃鳥にする予定だった上、作りたかったので仕方ありません。動物を殺すときに残酷だという愚か者はいますが、その後それを平然と食べる上を行く愚か者の多さを思えば、彼女の矛盾も比較的マシでしょう。
「王子様が自らの花嫁を探しているそうです。小さな足のたいそう美しい娘だそうですわ。ああ、まさに私のこと!」
「いやあのお母様。人妻だろ?」
 比較的常識的な姉2が言いました。
「シアさんは美人だから、変な男に目をつけられないかいつも冷や冷やしているんだよ。その馬鹿王子がシアさんに目をつけたら、陰でやっとくから」
「まあ、あなたったらおちゃめさん」
 とんでもない両親を前に、子供達は沈黙します。
「さあ、可愛い娘達。精をつけて王子様ゲットなさい」
「……精つけたら太るんじゃ」
「しっ。食べれなくなるでしょ」
 基本的に王子様にさして興味のない姉達は、母の顔を立てて食べ始めました。
 シンデレラは次は夕飯のために煮込んでいるブイヤベースを思いながら食事を取りました。
 その時です。
「ごめんくださーい」
 シンデレラは首をかしげ立ち上がりました。切り分けた暖かいカイユのローストがさめてしまわないかと気が気でなりません。
「はーい」
「あがるぞぉ」
 返事をしただけで何を思ったか勝手に集団が上がりこんできました。
「まあ、王子様っ!」
 こそこそと隠れようとするシンデレラの背後を継母が塞ぎました。
「ああっ、俺の豆脚の人!」
 シンデレラは王子様に見つかってしまいました。豆足とはまったくもって失礼です。
「なぜ!?」
「一晩考えて、ふとそこの馬鹿主を思い出して。忍び込んだら案の定このガラスの靴がっ」
 シンデレラは父を見ました。王子様に馬鹿呼ばわりされるほど馬鹿な事をしているのでしょうか。
「やっぱり関係者だった」
「なぜ!?」
 親子なので似ている可能性もないこともないのですが、シンデレラは傷つきました。
「なんだ、お前はうちの娘を探していたのか」
「そうだ。弟子入りするんだ」
「レンタル料は高いからな」
「……金取るのか?」
 シンデレラの意思というのが大前提なはずですが、自己中心的な二人の男には通じるはずもないでしょう。
「仕方ない。お前が欲しがってたのやるから」
「商談成立だね」
 勝手に売られてしまったシンデレラは窓を開けました。逃げ出そうとしたそこには、昨日の変な集団がいました。
「王子の嫁になるって本当?」
 ゴールドが無邪気に聞いてきました。
「なりません」
「そうだそうだ。俺の師匠になるんだ」
 シンデレラはもう何もかもどうでもよくなりました。そりよりも、ブイヤベースが気になりました。
 今夜も料理を作ることが出来るのか。それだけだけがただ頭の中にありました。


「こうしてシンデレラは幸せにくら……がっ」
 純粋な目をしてひたと見つめるフィオの前で、大樹はちゃぶ台の下敷きになった。
「ケイちゃん、どっからそんなものを……」
「父さんのコレクションよ。それよりも、何なのよ今のは」
「いや、友情出演遠い世界」
「意味わかんないしっ! ああ、もうフィオ! 今度絵本読んであげるからいまの意味不明なの忘れなさい」
 慶子はフローリングの床に座り込んだ。閑静なはずの我が家が賑やかしいのはいいのだが、馬鹿風味になるのは耐え難い。
「絵本とは何だ?」
「絵の描いてある本」
「漫画かとかいうものか?」
「ちがうちがう。まあ、あんたには精神年齢的にぴったりでしょ。どこにあったかなぁ?」
 慶子は立ち上がり、ちゃぶ台を持って地下の物置へと向かった。
 そこに、母親が読んでくれた絵本が眠っているはずだったから。

 

あとがき(微妙すぎるので見たい人は反転して見てください)
 分からない人はわらないでいい話題ばかりでごめんなさい。
 本当は、魔女見習いで統一しようとしていた新旧魔女っ子対決。なぜか魔女っ子メディちゃんとかいう単語が思い浮かんでああしたのですが、本当はぷで始まり、ふぁで呪文の終わるマニアウケしている魔女の予定でした。(妹が見ていたから知っているのであり、けっして魔女っ子にめろめろになっていたわけではありません。幼き頃、再放送で見ため○ちゃんにはめろめろでしたが)

 次にサディ。本当はサディふらっしゅ、祟るわよ。な、風にしようと思いました。しかし猫娘が出てきたとたん、こいつはウサギだっ! となり今の風になりました。

 本当は娘含めて三人いるから、シュ○ュトリアン(これが分かったらかなりすごいぞ)とかの実写系に仕様と思ったシアたち。ヨルが十分仮装していたので、そのままにしました。

 そして従者戦隊サーバンジャー? な風にしたかったのですが、カーティスとラフィがいて無理そうなのでやめました。リディアがいたら背後に爆薬というのも出来たのでしょうが。なによりも、いざ書こうとしたらさすがに羞恥心が出てしまいました。

 そして男のくせに塚様にかっこさせられたハウルは、ほっといてやってください。

 参考にしたシンデレラは、ペロー、グリム、ネズミの会社。全部を都合よくごゃまぜにしました。最後のほうなんて弟子とか言ってるし無茶苦茶です。
 しかし、変形合体とか、融合合体とか、分裂とか増殖とか、便利そうな変身ネタがあったのでシンデレラにしたのですが、どうだったでしょうか? 

 

 

 

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