大地の愛でし子 

 

200万ヒットの御礼短編です。

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 長い髪をなびかせて黒竜背後に控えさせるその姿は、女神と知らずともただの人とは思うまい。
 ラァスは少しばかり汗をかき、ちらと黒竜を見上げた。彼は楽しげに二人を見下ろしている。ぱっと見は恐ろしいが、中身は外見ほど恐ろしいということはないだろうし、ヴァルナ達ほどユニークな性格はしていない──と信じたい。
「こんな所にアミュを連れ込むとは何事じゃ!」
 アミュはラァスの背に隠れ、ビクビクしながらサメラの顔色をうかがう。彼女にも苦手な相手というのがいるのだと、ラァスはしみじみ腕組み頷いた。
 アミュの人間的成長も嬉しいが、今は現実を見なければならない。
 ラァスは黒竜の背に向かって叫んだ。
「ダーナさん!」
「ヴァルナはいません」
 竜の背から降りたのは紫色の瞳の美女ラナ。いないということは、きっと彼女にお仕置きされて留守番をしているのだろう。可哀想なことをしてしまった気がする。今度はヴァルナの方にも餌を与えなければならない。ダーナと違って単純だが与えにくい餌なので、回りくどいことをしなければならないだろう。
 ラァスは腕を組んだままサメラに視線を向けた。
「姫様、どうして友達の外泊ぐらいでいちいち騒いで追いかけるの?」
 ラァスはふんぞり返るサメラへと問うてみる。彼女は鼻で笑い、小ぶりな胸を張って答えた。
「友の大事ぞ。絶望の谷を越えてでも駆けつけるのが友であろう」
「いや、大げさな。別にそんなことまでしなくても、僕は紳士なのにねぇ」
 アミュが背中でこくこくと頷く気配があった。前髪が背中をさすり、くすぐったい。アミュはラァスに危害を加えられることなど、夢にも思っていないだろう。もしも手をあげたとしたら、自分が何かしたのではないかと悩み続けるに違いない。
 その揺るぎない信頼関係に嫉妬したのか、サメラはラァスをびしっと指さす。動作が大きいのは、さすが花吸血鬼の飼い主という感じだ。
「アミュ、男など皆ケダモノじゃ! その男も愛らしい着ぐるみを着た狼ぞ」
 似たような事をアミュに言い続けているラァスは、思わず同意し頷いてしまった。しかしアミュはしばし考え、
「…………可愛い?」
 想像したのか、アミュは拍子はずれたことを言った。その発想の方がよほど可愛い。
「言われてみれば可愛いような気も……」
 言った本人がさらに認めた。デフォルメされた可愛い狼が、うさぎかひつじの着ぐるみを着用している。確かに想像の仕方によっては可愛い。
「しかしそれはそれ、これはこれじゃ。アミュ、男など信じるでない」
「でも、私から頼んだことだから」
 アミュはラァスの腕を掴む力を強めた。頼りにされるというのは清々しい。
 ラァスは、ふっと笑ってフォローをしようとしたとき、視界の端で虫を追っていたウィルが駆けてくるのが見えた。
 興奮している。尾を振って鼻息荒く──喜んでいる様子だ。
「な、何じゃ!?」
 サメラの元へと駆けつけると、ウィルは鼻を彼女へとすり寄せる。
 彼女は神が大好きなのだ。よく見れば黒竜が人型に化けているので、大きな生物が見えなくなった今、サメラを気に入って寄ってくるのも当然である。レルノがウィルに続いて、彼の後ろで尾を振っている。
「アミュ、馬で何をしておった?」
「あ、遊んでいただけだけど」
 しどろもどろに答えるアミュを見かねたのか、ラナが馬達を撫でて引きつった笑顔で言う。
「いい馬ですね。乗馬を楽しんでいたんですね」
 何気ない一言に、サメラの表情が変わる。
「アミュ……そなた、馬に乗ったのか」
「う……」
 アミュは返答に困り、うつむいた。
 彼女の中にあるのは罪悪感だろうか。それとも羞恥だろうか。きっとおそらく、両方だ。
「姫様、人には色々と事情があるんだよ……って、私はこいつに劣るのかみたいな目で見ないでよ」
 サメラのラァスを睨む目は、情念に狂う女のものに似ていた。
 この程度のことで嫉妬されても困る。彼女は女で、ラァスは男。立場が全く異なるのだから、アミュの態度が違うのも当然なのだ。
 この険悪な雰囲気を打破すべく、ラナが再び言葉を挟んだ。
「ああ、ひょっとして、馬乗りの練習をしていたんですか? ここは初心者にも親切ですからね」
 ラナの言葉に、アミュがラァスの背中へと完全に隠れてしまう。きっと真っ赤になって可愛いだろうに、見られないのは残念だ。
「アミュ、そなた馬に乗れぬのかえ」
「……………」
「深い森の暮らしでラァスも馬をもらっておったから、てっきりそなたも乗れるものと思うていた」
 情報源はヴァルナかラナだろう。ダーナかも知れない。彼は馬も守備範囲らしく、ウィルを見て豹変していた。彼はサイズで判断しているわけではない、ということだけを理解した瞬間だった。
 まさかそれがこれほどの険悪を生むとは、彼も予想の範疇外だろう。時の女神の下僕といえども、時に翻弄されるのだ。
「アミュは馬に乗る必要なんて今までなかったからね。深淵の森には竜がいたし、城には転移用の魔法陣があったから、馬に頼る必要がなかったんだ」
 魔法陣は設置に相当の費用がかかる上、迎え側に魔道士が必要なために一回の移動につきそれなりの料金が発生する。だからヴェノムのような裕福な魔道士は気軽に使用できるが、馬で移動するのが一般的だ。僻地に住んでいれば、馬に乗れると思われても当然だった。
「アミュなぜ言わなかったのじゃ」
 サメラの問いかけに、背後のアミュは身を強張らせ──
「う……」
 呻いたかと思うと、気配が離れた。
「え?」
 振り向くと、森に向かって走り去るアミュの姿。追おうと思ったが、先にサメラが動いたのでラァスはそれを阻んだ。今彼女が追っても逃げるだけだ。アミュの中で、どう結論をつけるのか整理が出来ていないのだから。
 その代わりにというか、ウィルが彼女の後を追った。その後を追ってレルノも続く。つくづく、動物に好かれる子だ。
「ちょっと、姫様が来たから逃げたんでしょう。追ったらもっと逃げます」
 立ちふさがるラァスを彼女は睨む。女神に睨まれているのだが、今の彼女はただの人間である。この程度のことで、女神は出てこない。たとえ死ぬような目にあっても、必要がなければ出てこない。また生まれ変わって一からやり直すだけだ。どうせ動くのはヴァルナやサリサのような配下なのだから。
 対峙するのが人であるなら何の問題もない。彼女が王族だろうが何だろうが、人であるなら丸め込めばいい。
「行ってしまったではないか!」
「行かせたんです。姫様は、アミュの気持ちが分からないんですか!?」
 昔は貧しい暮らしをしていた彼女が、お姫様の友人として招かれ、世界の裏仕事をさせられて、慣れないことを彼女なりに頑張っているのだ。人としても神としても、必要としてくれた彼女のために。
「だいたい、姫様のために内緒で練習していたのに、どうして追ってくるんですか」
「わらわのためじゃと? ではなぜ黙って行ったのじゃ」
「決まってるでしょう。恥ずかしいからです!」
 綺麗な人は、顔を顰めてもその魅力が削がれることはない。風に煽られた銀髪は、風に溶けるようにしなやかにそよぐ。本当に、絹糸のように綺麗な髪だ。当たり前の用に、使用人に手入れをさせているのだろう。
 そんな環境に追い込まれたアミュも大変だ。
 逆らう者など今までいなかっただろうサメラは、反抗的なラァスをますます強く睨んだ。思い通りに行かないと、程度の差はあれ癇癪を起こすのが真綿で包んで育てられた者達に共通することだ。
 ラァスはサメラへと指を突きつけ、きっぱりと言い放つ。
「しつこい」
「しつこい……じゃと」
 怒ったようだが、ラァスは気にしない。気にしては負けだ。ここを乗り越えてこそ、彼女の手綱を握ることが出来る。
「姫様に恥を欠かせないようにこっそり練習するなんて可愛いことをしているんだから、ほってといてあげないと可哀想でしょ」
「なぜじゃ。なぜそなたに教えを請うて、わらわに頼らぬ!?」
「そりゃあ、姫様にそんな事頼めるはずがないでしょ、あのアミュが。
 一緒にいれば気付くでしょ。あの子はとにかく頼り下手な子だよ。邪眼だからね」
 魔動に関わる者ばかりが周囲にいるから気にする者もあまりいないが、邪眼というのが世間ではどういう扱いを受けるか、知識として知らぬわけではないだろう。神の血を引いている、火の聖眼を持つ女神というのが事実でも、世間でのアミュは忌み子だ。
 身体が弱くとも優遇されてきた彼女とは、まったく別の世界に住んでいたのだ。それを理解させてやらねばならないだろう。
「僕が頼られるのに、どれだけ苦労したと思ってるんですか。毎日のように世話を焼いて、ようやくお願いされるようになったんですよ。
 そんなアミュが、病弱だったお姫様にこんな事頼むはずないじゃないですか。お姫様は、全てを与えられる側であり、与える側じゃないんですから」
「く……」
 年季と身分の違いにようやく気づき、彼女は悔しげに声を漏らす。
「それに姫様のことだから、出来て当たり前的な態度を取ってたでしょ」
「…………」
「それが一番悪いんです。だから恥ずかしがって逃げたんですよ。
 いいですか。アミュは貴方に駄目な子だと思われたくないから、ひっそり練習しようとしたんです。今後に姫様が恥をかかなくていいよう、姫様のためにね」
 サメラのためにというのが効いたのか、彼女は怒りを引っ込めた。表情こそあまり変わらないが、若干ニヤニヤしているように見える。
「それなのに追われたら、びっくりするでしょ。しかも勇気を出して頼った僕を責めたら、人に頼れない子に逆戻り。姫様なんて、一生腫れ物に触るような無難な交流ですよ」
「……むぅ。ではどうしろと?」
「互いの理解から始めて下さい。アミュは世間知らずの魔法以外に何も知らない女の子だと思って、自分が出来ることを相手も出来ると思い込んだりせず、何が出来て何が出来ないか、何が得意で何が苦手か、何が好きで何が嫌いか、それをまず知ることですよ。
 姫様、アミュの得意なこと知っていますか? 好きな物知っていますか?」
 サメラは考え、胸を張って答える。
「得意なのは菓子作りじゃ。料理は苦手なようじゃが。好きなのは花と本じゃ。嫌いな物は知らぬな」
「菓子作りも料理も得意じゃないですよ。師匠に習ったことだから、続けたいと思っているだけです。アミュは嫌いじゃない物の方が少ないですが、父親と自分の赤を憎んでいます。花が好きなのは、小さな頃にもらったことがあるのが、野に咲く花と古い絵本だけだったから」
 聞けばもっと深い理由があると分かるが、上手く聞き出すのは難しい。時折ぽろりと漏らす言葉の中に、含まれている、静かで大人しい彼女の心の深淵は、ラァスとはまた違った種類だがとても深い。
「時間が必要なんですよ。姫様は師匠と同じぐらいアミュに影響を与えているから、焦る必要なんて無いんです。姫様が他所の国に嫁ぎでもしない限りは、ずっと一緒にいられますからね」
 サメラの中のサギュは、おそらく結婚については考えているだろう。せっかく整っている環境を崩す婚姻を避けるために、手を尽くすだろう。幸い、最も発言力のある地神が側にいている。政略結婚の道具として他国に行くことはない。
 他国に行かないだけだろうが。
「時間か……」
「そう。時間です。今ここでアミュを追いつめたら、きっとこの先もアミュは姫様に頼ることはないですよ。
 それでいいんなら、留まってください。嫌なら、なかったことにして帰ってください。帰ってくだされば僕もアミュをなだめます」
 サメラは不服そうな外面を作りながらも、敵意は完全に引っ込めた。いや、不服そうな振りをしているだけで、内心はデレデレの上機嫌に違いない。
「仕方がない。アミュがわらわのためにこっそり練習していたというのなら、口を挟むのは野暮じゃな」
「そうそう。姫様に恥をかかせまいという、アミュの可愛らしさの現れなんだから、今後も理由を告げずにいなくなるときは、追っちゃ駄目ですよ」
 そうしてくれれば、これからも外泊可能である。どうせプロポーズするなら、自然に囲まれた美しい雰囲気のある場所でしたいものだ。婚約指輪を今から選んでいる最中で、アミュに似合う石とその細工方法を考えている。
 決行はアミュが十四歳ぐらいになった頃の予定である。そうすると来年が勝負で、それまでに神殿内で確固たる地位を手に入れなければならない。そこまではこの聖眼と可愛らしさと強かさでどうにかなるだろうが、その後大変なのが、この姫君の存在である。アミュにプロポーズするにあたり、おそらく一番の強敵だ。なぜって、ヴァルナを見ていれば分かる。この前は何をしたのか三階のベランダから荒縄で逆さにつり下げられていた。ラァスもさすがにああはなりたくない。あちらと違って純粋にアミュだけを思っているが、サメラのアミュに対する執着は高く、その結果かデートをする先々に邪魔をしに来たりする。そして出費がかさむ。サメラの分も奢らなければならないからだ。
「それにアミュが出かけるときに、姫様へのプレゼントを買いにでも行っていたら、本当に気まずいよ。アミュは女の子へのプレゼントは僕に聞いてくるから」
「ファーリアに聞けばよいものを」
 サメラは自身の護衛の一人である、女装の剣士の名を口にした。女装が趣味なだけで中身はかなり立派な男であるが、サメラにとっては乙女のようだ。
「ほら、僕は若い女の子の流行は勉強しているし、アミュの知り合いはほとんど僕の知り合いでもあるし」
 つまり相手の趣味や似合いそうな物は、ラァスに聞けば分かるのだ。アミュが一人で買いに行けば、何を買っていいのか分からず結局買わずに帰ってくるだろう。
「なるほど……アミュはもっと交友範囲を広めねばならぬな」
「変な人はやめてね。できれば純粋培養された深窓の令嬢系で」
 アミュの友達が増えることは問題ない。悪い友達でもアミュの毒のなさで浄化してしまうそうだが、悪い道を知らない方がいいに決まっている。
「深窓の令嬢かはともかく、なぜわらわが可愛いアミュを変な者と引き合わせる」
「ヴァルナさん」
「あれは例外じゃ。裏に住んでおるものじゃから、我が家のように勝手に入ってくる」
 それはそれで色々と問題がある気がするのだが、サギュの記憶がないのだから、そのあり得ない納得の仕方でも仕方がない。他人であれば絶対に役所に突き出しているだろう。
「姫様、帰るんですね」
 黒竜のランスがサメラに問いかける。
「うむ、すまぬなランス」
 せっかく人型になったのにと黒竜が呟き、サメラを背負うと再び元の姿に戻る。
 白竜ばかり見てきたため、その姿は異様である。魔の竜とも呼ばれるそれは、白竜とは違った美しさがあった。ラナがその背中に飛び乗ると、ランスを翼を広げて飛び立った。
 それからしばらくするとサメラ達が帰ったのを知って、泥だらけになったアミュが帰ってきた。どこかで転んだらしい。ここが彼女の愛すべき、人間らしさを見せる欠点だ。


「そっか。アミュは馬に乗れるようになったか」
 アミュを送ってから、遠回りになるがその帰りに寄った聖騎士団の訓練所で、ラァスは出された茶を飲みながら答えた。
「心配してたんだ。アミュが暗い顔して来てたから」
 人払いしたはずなのに、なぜ彼らが知っているのか気になるところではあったが、それは今後気をつけることにしよう。
 こっそりと徹底的に施設を洗い直さなければならない。覗き穴があるのだとすれば、安心してアミュをここに招き入れることも出来ない。
「そりよりラァスさん。あの我が儘な馬、何とかなりません?」
 カリムの問いに、ラァスは首をかしげた。ウィルは多少我が儘だが、賢いのでこのような場所では我が儘を発揮する要素はないはずだ。馬小屋は掃除したばかりでそれほど汚くないし、水ぐらいしかやっていないはずだ。森の水がおいしくて、舌が肥えたのだろうか。
「あの馬、雌に囲まれていないと不機嫌になるんですよ」
「…………え?」
「隣の雄が可哀想で、移動させたら反対側にいた雌には甘くて、両隣を雌にしたらすごいご機嫌なんですよ。それに、人間に対しても女性が来ると愛想を振りまくんです。まるでヴァルナさんみたいな馬ですねぇ。いや、あの人は男に威嚇することはないからマシか」
 言われてみれば、あの馬が懐いていたのは女性ばかりだ。元の飼い主もレイアであり、神殿の馬丁には女性がいて、綺麗な彼を好んで世話しているため、彼女にはよく懐いていた気がする。
「撫でようとしたら蹴られるしよぉ」
 ライアスがブツブツと愚痴を言う。最近はここには彼に乗って来るので、そういうことがあってもおかしくはない。
「じゃあ飼い主とはいえ、なんで男の僕にはけっこう懐いてるんだろうね」
 少なくとも蹴られたことはないし、撫でると喜ぶ。ただ時々かんに障るほど小賢しいのだ。例えば気に入らない餌は絶対に食べないとか、勝手に馬屋から自力で出ては女の子に撫でられていたりする。
 今思えば、女の子だった。
「君が乙女チックだからじゃないかな?」
 突然答えたのは、テーブルの下からはい出てきた流砂だった。下から出てくる事に慣れきったラァスは、普通に椅子を引いてそれに流砂を座らせる。
「…………別にいいけど、驚いてくれなくても」
 流砂は拗ねながらテーブルに顎を置いた。
「でも、僕が乙女チックとかって、あいつ僕のこと女の子だと思ってるの?」
「さぁ。でもあいつはユニコーン混じりだから」
「え……って、姫様んところの吸血鬼と同レベル!? 嫌っ!」
 ラァスは頭を抱えて立ち上がる。
 あの花吸血鬼はラァスを乙女と間違えて口説いてきた過去がある。今でも会うと口説いてくる。ちなみに男だと言っても、それは続いている。血が美味しそうなら問題ないらしい。
「よし、帰ったらまずは同族の男の子に慣れさせよう。うん。友達は多い方がいいよね」
「は、馬だろうが人間だろうが、友達よりもモテた方が勝ちだろ」
「いいの。僕ら何の努力もしなくてもモテるから。美男子同士だもんね」
 ライアスが思い切り肩を落として俯いた。少し可哀想なことをしてしまったのかも知れない。彼は最近恋人に振られたばかりである。
「周囲の意識改革は、して欲しいと思ったら自分でせっつかないとね」
 ラァスは握り拳を作り、茶の礼を言って施設を出た。
 やればきっと出来る。


 その後──孤軍奮闘していると、レイアを含む周囲の女達から「いざというときは男の子とも協力してくれるからいいじゃない」と言われて、ラァスは己の馬の改革を諦めた。


 

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