18 地下室の主
2
吐く息が白い。
空気が冷たい。
眩暈がした。
「何これ……」
「マースとジェームスの趣味じゃないな、これは。マースは人体切り刻むのが趣味みたいだし、ジェームスは追い回すのが趣味みたいだし。だからたぶん、ローシャの拷問部屋だろ」
ハウルはけらけらと笑った。
拷問部屋。
これぞまさしく拷問部屋。
赤錆びた、妙な染みのある鉄の処女や鋼鉄の乙女。天井からぶら下がる揺りかご。魔女の楔。審問椅子。絶妙な角度のはしごに、拘束具のついた寝台。それらが部屋の隅の方に追いやられていた。がらんとしたほこりの積もった冷たい石の床が、閑散とした冷たい雰囲気をかもし出す。今まで感じていた寒気に、別のものが加わった。
「…………ローシャちゃん……グロいよ、これ」
花壇で死んだ、女の子が好きな女の子を(怖いけど)思い出す。見た目は虫も殺せなさそうなほど愛らしいのに、中身は女の子の悲鳴を聞きたくてたまらないというヤツだ。
「んだなぁ。毎年捨てようと思うんだけどな、捨てると叱られそうだから隅の方に寄せてんだ。
ここ、天井高いし広いだろ? ルートでも歩けるんだ」
こんな場所、できれば回れ右したい。しかしそれはそれで怖い。何かいそうで。
「い、いたりしないよね?」
メディアは拷問用具に興味を持ったようで、使用しなければ無害な道具を杖でつついて遊んでいた。それでもラァスは声を潜めてハウルに問う。
「何が?」
ハウルは首を傾げる。分かっているくせに。ラァスはハウルのスネを軽く蹴った。
「わかったわかった。ここはいないって。ネズミぐらいはいるかもしれないけどな」
「もう、ネズミ捕りぐらい仕掛けといてよ。噛まれて病気になったらどうしてくれるの?」
知り合いにネズミが原因の病気で死んだ者がいた。それを思うと、平然とそれを言うこの男が憎らしい。彼は病気の一つや二つでは死なないのだろう。ネズミに噛まれて病気になって死ぬ神など存在していいはずがない。
「ははは。お前白魔術習ってるんだろ。上達してるのは能力の強化系だけどな」
ハウルはいつも人の痛い場所を突いてくる。もちろん知られたくはないが、この男には筒抜けになってしまうのだ。風達の噂話の口を封じる手段など、ラァスは持ち合わせていない。ハウルが知りたがって彼らに聞く限り、あきらめるしかない。
「上達してるよ! ただ、高度な浄化魔法はまだまだ先だけど。回復魔法だけなら、もう師匠よりも上手いと思うよ」
「ったり前だろ。あいつは回復魔法が苦手な分、医術に力を入れたんだからな」
正直、今の今まで知らなかった。彼女が医学に精通しているのは、そんな理由があったからだとは……。
てっきりただの趣味だと思っていたのだが……。
「んじゃ、掃除頼むな」
「……こんな寒いところで?」
現在、完全防備であるにも関わらず、寒くて死にそうだった。できれば暖炉の前で本でも読んでいたい。
「んじゃあ、そこら辺の鉄くずに石つめて暖めればいいだろ。その程度なら簡単だろ?」
──さっき、捨てると叱られるって言ってなかったか、こいつ。
捨てるのはだめだが、粗末に扱うのはいいとは、どういう了見なのだろうか。しかし、それでいいのなら実行することにしよう。火の魔法は苦手ではない。もちろんアミュと比べると子供のお遊戯の範疇だが。
「んじゃ、俺はアミュと地道に雪かきしてるから。お前らはルートがまた眠らないような環境、ちゃんと作っとけよ。じゃないと、雪はそのまんまにしてやるからな」
ギブアンドテイクと言いたいのだろう。
「でもでも、こんな怖い場所に霊感皆無のメディアちゃんと一緒にいろと?」
「っせぇな。ここにはいないって言ってるだろ。いてもお前を見れば逃げてくさ。消されたらたまらないから」
弱い幽霊程度ならラァスでも浄化できるだろう。ただ、そんな精神的余裕があるかどうかは別として。
「だいたい、アミュがぽーっとどこかを見てたり、壁としゃべって怯えてるだろ、お前。ならいっそ、何も見えない感じないメディアの方がマシだろ」
「……うーん。それはそうなんだけどさぁ」
「ほれ、掃除道具はあそこ」
「じゃあねぇ……」
ハウルは本当に行ってしまった。
不安は残るが雪がそのままでも困るので、ラァスはしぶしぶ部屋のすみにあるロッカーへと向かう。ほこりだらけのロッカーを開けると、必要な掃除道具を持って、まだ熱心に拷問道具を調べているメディアに声を掛けた。
「メディアちゃん。水ちょうだい」
心の底から意外なのだが、メディアは水の属性だ。ラァスは彼女に近付き、バケツを差し出した。
「この寒いのに水?」
「僕が暖めるから」
「あんたが? 熱湯にならない?」
「水足せばいいでしょ?」
「そんなの自分でやればいいじゃない。あんた、水もできるでしょ」
「僕には他にやる事あるから」
メディアが呪文を唱え始めたのを見て、ラァスは目をつけていた鉄の処女に向かい立つ。観音開きの乙女。その空洞の中身には無数の針があり、人を中に入れて蓋をし責めるのだ。これなら中に入らなければ近付いても危険はない。元々これは拷問用具だ。たとえ中に入ったとしても、急所を外すよう設計されているのでなかなか死なないようになっている。最も、この拷問道具は見た目のインパクト、つまり威圧するために置かれていることが多い。だから大丈夫なのではないかと考える。ローシャなら、中に放置して死に行く様を眺めたりとしていそうな気はしなくもないような気はするが、きっとそこまではしないと勝手に信じた。信じたい。
「さて……」
ラァスはぞうきんで冷たい乙女の胴を開く。
中身は外よりも少し錆びがひどいが、血の跡がついていたりはしない。それに安堵して呪文を唱える。
まず手始めに、呪文を唱えて床から石を取り出した。召喚術のようなものだ。それを中に詰め込む。耳に響く鉄の音。いつもならメディアに文句を言われるのだが、こちらの意図を察してくれたらしく何も言わない。
次は熱を生み出す──火属性の魔法。火の魔法は手加減が難しい。アミュが始めに行った特訓は、沸騰させないように水を熱い湯にするというものだった。それほど火の加減は難しいのだ。
──まあ、この部屋広いし寒いからいいけど。
ラァスは術を発動させ、手のひら上に出来上がった小さな火球を鉄の処女の中に収め蓋を閉じた。これは触れた瞬間発動される術だ。遠隔操作もできるので、少し動かすだけで発動する。
この鉄の固まりは真っ赤に染まった。
「あら、いいじゃない」
今まで震えていたメディアは、鉄の処女へと近付き手袋を取って指先をその熱にさらす。
彼女はいつになく優しげな表情をしている。いつもこうならいいのに。本当にもったいない。
「でも、これだけじゃ足りないわ。鉄くずをあっちの方に移動させて、同じ事をなさい」
いつもの顔で、いつものように命令するメディア。
──別にいいんだけどね……。
ラァスは周囲を見回し、鋼鉄の乙女に目が留まる。
他は燃えてしまいそうなものばかりだ。中はおそらく空洞だろう。直接中に石を詰め、離れたところから術をぶつければ……。
「……壊しちゃいけないんだよなぁ」
石を上手く中に詰められるか。失敗すれば、二つは混じりこの部分は壊れるだろう。
「何よ、これ」
「鋼鉄の乙女。
まず抱きしめられるんだ。ちなみに背骨が折れるぐらい力は強いの。そしてその状態で中から針が出る。まず即死かな。ローシャちゃんの趣味じゃないだろうけど」
「……そう」
メディアは顔を顰めた。
「あんた、そういうのは平気なのね」
「うん。とりあえず後ろ側から見てみようかな。危険なのは前だし」
ラァスは鋼鉄の乙女の背後に回る。
壁を背にし、そろりと近付く。メディアも好奇心からか後を追ってきた。
その時だった。
「きゃぁぁぁぁぁあ」
突然メディアが悲鳴を上げて、ラァスに抱きついた。
「なに!?」
予測していなかったラァスはメディアに押し倒され、壁に背中を打った。それは問題ない。とっさに手をついた壁の一部ががごっと音を立ててめり込んだことが問題だった。
──嫌な予感が……。
「うわっ!?」
背にしていた壁が回転した。
二人はばたりと後ろに倒れ、一回転した壁に押し出され……。
「……うそぉ……」
隠し部屋らしきところへ押しやられた。足で壁を蹴って確かめるが、それはびくともしなかった。
メディアはラァスを抱きしめて離さなかった。周囲の状況を確かめたかったラァスは、彼女をはがそうとするが、メディアはふるふると首を横に振る。
「メディアちゃん?」
「ネズミっ」
──は!?
「ネズミがいたのっ」
メディアは藍の瞳を潤ませて、ラァスの顔をひたと見つめた。
──う、やっぱ顔は可愛い……って、ネズミ?
「メディアちゃん……ネズミ嫌いなの?」
「好きなの?」
「いや、好きではないけど」
「このお城今までネズミを見たことなかったから好きだったのに!」
彼女はついに泣き出した。
「あ、あのねメディアちゃん。もういないから」
まさか泣かれるとは思わなかった。あのメディアがだ。仮にも神であるハウルを沼に蹴落とす度胸の女、あのメディアがだ。
「本当に?」
「ああ。ほら見て」
このときラァスは初めて周囲を見回した。
──明るい?
薄暗いが、明かりがあった。
光がふよふよと飛んでいた。
何か、光るものがいくつもある。目だろうか。ああ、目なのか。骸骨の目って、光るんだ。人形の目も光るんだ。寝台に座っているのはジェームスだった。漂う光に囲まれているのはマースだった。
「っ」
ラァスは壁際まで後退した。
「あらメディア様。あなたに涙は似合いませんわ。残念ながらハンカチは持ち合わせておりませんので、お言葉をかけることしか出来ませんが。大丈夫です。ここにはネズミなどおりません」
当たり前なのだが、人形が無表情でそう言った。
「その声……ひょっとしてローシャ?」
メディアは術で明かりを生み出した。
ラァスの心臓が凍りつく。
壁にはオブジェのようにいくつもの白骨が吊られており、突如かちゃかちゃと動きだした。
──ひぃっ。
声も出ない。恐怖のあまり、金縛りにあったように動けない。背を壁に押し付けるようにして息を殺す。ときおりひゅうと音が漏れる。
「はい」
「どうしてこんなところに?」
メディアは平然と聞いた。彼女が恐ろしいのはネズミであり、悪霊ごときは怯える価値もないようだ。
「今日は私たちの日ですの。それで毎月ここに集まっております。ヴェノム様の了承は得ていますから、ご安心ください」
知らなかった。ハウルも知らなかったのだろう。さすがにこんな場所の隣に自分が弟として可愛がるルートを押し込めたりはしない。
「たち? 他に誰かいるの?」
ラァスはその意味を理解するのにしばしの時を要した。
──まさかメディアちゃん、本当に見えてない?
なんて羨ましい体質なんだ。
ラァスはメディアを憎く思った直後、
「……ほらあなたたち。姿を現しなさい」
人形ローシャの言葉に、光は人へと姿を変えた。生前の姿なのだろう。美しい子供や、女性。なぜか薄汚れた男女も混じっていた。彼らに共通して言えることが一つだけある。足がないことだ。
「……」
ラァスの目の前が一瞬真っ白になった。白くなって、すぐに引き戻される。
床が冷たくて。空気が冷たくて。そして、ジェームスの視線を感じて。
「ようこそ、ラァス君。我等死霊のパーティへ」
ジェームスはこちらへゆっくりと近付く。
口元が笑っている。いや、彼がラァスを見るときはいつもあんな顔をする。
「メディア、こんにちは。君もけっこう可愛いなぁ。君みたいな気の強そうな子が泣くなんて……くくっ」
マースが舌なめずりをしてメディアに近付く。
その取り巻きの半透明のゴーストたちも。
──っ。
ラァスの思考が完全に停止した。
ラァスは無意識に振り返り、拳を振り上げる。
考えるではなく、身体が本能的に動いた。
この恐怖から逃れるため、壁を叩き壊してこの部屋を出る!
「だめだよ、ラァス君。おいたをしては」
突然、後ろにいたはずのジェームスが壁から顔を突き出した。
意識が遠のく。
これは夢だ。
うん、夢。
夢現をさまよいながら、言葉を勝手に口ずさむ
「眠れぬ哀れな者たちよ」
夢の中でも練習した呪文。とても簡単な、優しい呪文。
「それは……」
ジェームスが何か言って顔を引っ込めた。だが、ラァスはそれに気づかずに続けた。
「大地は汝ら包む床 大地の優しき歌を聞き 静かな救いの……」
少し変わった穏やかな呪文。
それをラァスは混乱の中、殺意をこめて唱えた。
浄化呪文。別名強制成仏魔法。
「地に眠れ!」
発動した。
清らかな光の中、ラァスはすべてを呪いながら壁を殴りつけた。
人形を抱えたメディアと、ジェームスに捕まったラァスがいた。相変わらずラァスは気を失っていた。
問題なのはそこがルートの部屋であること。ルートが突然やってきて、二人が消えてしまったと騒ぐので慌てて駆けつけたら、これである。
「なんでお前らここにいるんだ?」
「今日は新月だ。新月の日は、あちらの部屋で親睦会をしている」
ジェームスがラァスの顔に落書きしながら言った。
殺しても傷つけてもいけないから、落書きというしょうもない方法を取ったらしい。
「そーなん……」
親睦会と言うよりも、自分が殺した子供たちを見に来ているだけだろうが。
「しかし、大したものだな」
「何が?」
「この少年は、初級の浄化魔法でこの城の約半数の悪霊を浄化させてしまった」
──そりゃすごい。
一般的に、一対一。せめて指折り数えられる数の霊を浄化させる術。それでここにいる、数百の「悪霊」のうち半分だ。しかもただの浮遊霊ではない。立派に世に未練を残す悪霊と呼ばれるモノ達だ。
恐怖心が彼の潜在能力を引き出したのだ。
ラァスがしたことは、そよ風を起す術で無理矢理竜巻を起すようなものだ。ラァスが気を失ったのは、そんな無茶がたたったのだ。おそらく。この偉業に免じてそう信じてやる。
「しかしこれで半分……なのか」
部屋に溢れかえっている悪霊達を眺める。
半分いなくなっても、まだ数え切れないほどいる。
「お前ら一体何人殺したんだ?」
大人も多く混じっている。子供だけだと思ったら、大人もかなり殺していたらしい。
「いや。さすがにすべてが私達ではないぞ。私の以前の持ち主が殺した奴隷達だ」
「……へぇ」
さすがに呆れるしかない。
そういう星の元にある城なのだ。今の持ち主は殺人鬼ではないが妖怪だ。
「何のこと?」
メディアがローシャ入りの人形に問う。ローシャは花壇を離れるときは人形を使うらしい。こうしないと花壇を離れられないのだそうだ。自縛霊のくせに平然とここにいるジェームスの方がおかしいのだ。
「ここまでしても見えないのですね……」
「何よそれ」
「魔道師が私達を見れないというのは、見える者よりも守りが強い証拠です。守りが強いからこそ、見える必要がない。素晴らしい才能です。ラァス様の場合、自己暗示によるものですが」
「……そうなの? 私は花壇であんたを見ることが出来たわよ」
「花壇でメディア様が私を見ることが出来たのは、私が閣下のお力をお借りしていたからですの。私が人形から抜ければ、貴女様は私を見ることもできません」
「……そうなの? そこの二人は普通に見えるけど」
「閣下は特別です。そしてマースは精霊です」
「……精霊?」
「精霊になったのです。ごくたまに、死んで精霊になれる者がいます。もちろん、完全な精霊ではありませんわ。完全な精霊になるにはまだまだ時間がかかります」
「……へぇ」
メディアはマースを見て、手招きする。
「いらっしゃい」
「え……」
「とっとと来なさい」
珍しく、マースのこ憎たらしい笑顔が引きつった。
──哀れな。
「なぁなぁハウル。遊んできていい?」
腕の中のルートがハウルを見上げて問う。
遊ぶ?
と、年齢的にルートと同じほどの子供たちがこちらを見ていた。残っているだけあり、ちゃんと全身が現れている。
「……あいつらと?」
「うん」
「……お前がいいなら、好きにすればいいぞ。うん」
ルートはハウルの腕から抜け出し、元のサイズに戻る。
「ついでに掃除してもらえ」
「うん」
最早ラァスもメディアも役に立たない。今のメディアに掃除をしろなどと言えば間違いなく後で呪いが来る。実験台にされるのはもうこりごりだ。そしてラァスは、二度と地下室には近寄らないだろう。アミュの頼みであろうとも。
ハウルはそのうち凍死しかねないラァスを落書きを楽しむジェームスから奪い取る。
「待て。まだ額に犬と書いていない」
ジェームスの非難は無視して、ハウルはリビングへに寄った。火のはぜる暖炉の前にラァスを置いき、発掘作業に戻った。
「りゃ、りゃ」
ぺちぺちぺち。
ラァスは寝返りをうった。
「りゃ、りゃ……らぁ」
ばふばふばふ。
ラァスはさすがに目を覚ました。
目の前に、手のひらとウサギのぬいぐみるで人を叩くラフィニアが座っていた。
ラフィニアはウサギの耳を持ち、きゃっきゃっと笑いながら振り回す。
「……ラフィ」
頬を撫でると、その手をぺちぺちと叩いてくる。
「らぁ……りゃあちゃあ」
口にするたびに発音が違うところが、ものすごく可愛い。
「なんで僕こんなところで寝てるの?」
ラァスは起き上がり、ラフィニアに正しくヌイグルミを持たせた。
「お転婆さんだね、ラフィ」
「だぁうぅ」
再びヌイグルミを振り回す。
「ぷっ」
小さな、しかし確かに噴出す音が聞こえた。
椅子に腰掛けこちらを見ていたカロンが、なぜか顔を逸らして身を震わせていた。
そしてヴェノムまでもが口元を押さえて変な顔をしている。
「何?」
「ら……ぶっぐっ……」
何か言おうとして、カロンは口を押さえて腹を抱えて変な風に笑った。
「感じ悪いなぁ……僕の顔になんか付いてるの?」
その言葉にヴェノムがこくこくと頷いた。
「はあ?」
ラァスは影の中から鏡を取り出し……。
アミュは城から突然発せられた奇声に顔を上げた
「今の、ラァス君?」
悲鳴のような、怒鳴り声のような。
「ああ、気づいたんだな。気にするな」
一緒に屋根の雪を溶かしていたハウルが言う。
「……気にしなくてもいいの?」
「ああ。ただ驚いてるだけだ」
驚いている?
「写真撮っといたから、あとで見せてやる」
よく分からないが、
「うん」
とても楽しそうだ。