薔薇の魔女

 

 ざぁと音をたてて通り過ぎる風は、彼女の髪を優しく撫でていった。
 ついこの間まではあれほど暑かったのに、今ではもう肌寒さすら感じる。やはりウェイゼアよりも北に位置するからだろうか。
 風は草木を優しく撫で、しかし時には乱暴にかき乱す。空を見上げると、夏の頃に比べ青く遠く感じる。夏の頃の淡い青もいいが、はっきりとした青もいい。冬になれば、空の色はもっと鮮明になるだろう。そして風達は元気に人々を冷たい吐息で震えさせながら移動するのだ。
「素敵な風。この森の風も素敵」
 ヒルトアリスは髪を押さえ、目を伏せた。見えすぎないようにと、特殊な視界断じる眼鏡を作ってもらったが、それでもその存在は感じ取れる。精霊達が今は楽しそうに踊っている。この時期の精霊は一番浮かれているかも知れない。
「ハウル様」
「だから、様はいらんっつーに」
「農作業とは楽しいものですね」
「聞けよ」
 ヒルトアリスは手ぬぐいでわずかに滲んだ汗を拭く。汗をかいたので、風がより冷たく感じた。そのひんやりとした感じが心地よい。
「美味しそうなかぼちゃ」
「農家のおっちゃんたちは、この瞬間のために日々苦労してるんだぞ。感謝しろ」
「はい。感謝します。今夜はカボチャのポタージュだそうです」
「ん……いいなそれ」
「ところで、あちらの方に大きなカボチャがあったんですが、なんですか?」
「ああ、この土地の魔力で時々変になるんだ。まずいからほっとけ」
「はい」
 ヒルトアリスはカボチャの一つを抱きしめた。土の匂いは、いつも剣の練習の時に親しんだものだった。だが、こうやって触れる方が素晴らしい事だと知った。
「ハウル様、手伝わせてくださってありがとうございます」
「ったく……いくぞ」
「はい」
 スカートの裾についた土を払ってから収穫された野菜のかごを持ち、ヒルトアリスはハウルの後に続く。
 屋敷の中に入ると、精霊達とはまた違った気配がするのだが、その正体は彼女にはわからない。そのうちわかるとハウルが言うので、魔道の知識や力を得なければわからない事なのだろう。
 ここに来てから学ぶ事は多かった。
 まずは魔道について。何もかもが初めてで、精霊という存在についてもほとんど知らなかった自分が恥ずかしかい。そして他には歴史や化学についても習っている。魔道師は知識がなければならないらしい。教科書通りの事しか習っていなかった彼女には、ここでの勉強の何もかもが新鮮であった。
「ハウル様、あとでわからない事を訊いてもいいですか?」
「ん、別にいいけどよ。ヒマだし」
 彼はちらとヒルトアリスを見た後、ぷいと顔をそらした。口は悪いが、思いやりのある優しい、素敵な男性だ。皆が彼のようだったら、ヒルトアリスが男性を異性として好きになる事はなくても、苦手意識までは持たなかっただろう。
 二人が玄関近くまで来ると、そっと歩を止めた。
「ハウル様」
「ん、誰かいるな」
 玄関の方でわずかな足音がした。複数の足音だ。
 その瞬間、甲高い女性の声が城に響いた。
「出てらっしゃい、この性悪女!」
 ノックはなかったが、忍ぶつもりはないらしい。
「な、なんだ?」
 ハウルも知らないらしく、野菜を床に置いてから慌てて玄関ホールへと向かう。そこには閉じた日傘を手に、深紅のドレープドレスに身を包んだ美しい女性がいた。外見的な年の頃はヴェノムと同じほどに見えた。怒っているのか、目がつり上がっている。
 そして二人の少年達が怒れる女性を必死になだめていた
「今の声は一体……」
 背後からカロンがやってくる。彼は女性を見て顔をしかめた。
「あら……いい男」
 女性はこちらを見て目を丸くした。
「な、なんか見ているよ」
「す、素敵なお姉様……」
「いやお前、ヴェノムは?」
 ハウルが呆れたように言ってくる。
「ヴェノムお姉様と比べるのは間違いです」
 女性を素敵と思う事と、ヴェノムに寄せる好意は全く別物だ。素敵と思うなら、カロンも素敵な男性だと思っている。しかし赤いドレスの女性は顔色を変えた。
「こぉむぅすぅめぇぇえ」
 再び怒りに目尻をつり上げ、赤い女性は近づいてくる。
「え、あの、何か気の触るような事でも」
「おばさん、目くじら立てるなよ。しわができるぞ」
 しわができるような年齢には見えないが、彼には何か見えているのだろうか。
「誰がおばさんですってっ!?」
 ハウルの言葉に彼女は再び怒声を上げた。
 美人だが、恐い。
「あなた、あの魔女の息子!?」
「ちげぇよ」
「じゃああの女の子じゃないの?」
「んだよおばさん。うちのババアに何の用だよ」
「あのおんなの孫……ふん、孫ねぇ」
 彼女の瞳にハウルの姿が映る。
「先生、よその子にまでへんな目を向けないでください! 相手が綺麗な子だからって恥ずかしい!」
 共の少年の一人が彼女に言う。どうやら彼女の弟子のようだ。ひょろりと背の高い男の子で、分厚い眼鏡をかけている。きっと読書家なのだろう。もう一人の男の子は彼より小柄で、やんちゃそうな雰囲気だ。
「お弟子さんの方は、まっとうに育っているようですね」
 声の調子はいつものまま、それでも揶揄の意を含む事を思わせる言葉をかけたのは、体調が悪いと言って十代半ばの姿をとるヴェノム。体調が悪いと若くなるなど、とても素敵だ。同じぐらいの年頃のヴェノムが見れるなどとは思いもしなかった。
「……あ、可愛い」
 眼鏡の少年はヴェノムを見てつぶやく。
「ケイリ、今なんて言ったのかしら?」
「なんでもありません」
「あの女は妖怪よ! 神を操り国を傾けた事もある悪女よ! 人の仕事の邪魔をしてくれる嫌がらせの天才よっ!」
 彼女の言葉にヴェノムは首をかしげた。
「妖怪妖怪というのはやめなさい。どうして伝わったのかは知りませんが、うちの孫までマネを始めたのですよ。
 それと、嫌がらせをした覚えはありませんが」
「いつもしてるじゃない! 一年半前だって、人の仕事の邪魔したあげく、へんな呪いまでかけてきたじゃない! 魔法が使えなくなって大変だったのよ!」
 ヴェノムは首をかしげた。そしてぽんと手を打った。
「ああ、あれはあなたの仕業だったのですか」
「何したんだ? 俺は知らないぞ」
 ハウルはヴェノムに問う。彼が知らないうちにヴェノムが誰かに呪いを書けていた事に驚いたらしい。
「ラァスに会った時、呪いを提供した方ですよ。誰かは知りませんが、非合法な仕事を請け負った罰として、魔封じさせて頂いたのですが、このアーリアだとは思いませんでした」
「で、結局そのおばさん誰だ?」
 彼はあくまでもアーリアと呼ばれた女性を『おばさん』と呼ぶ。』
「ただの知り合いの魔女で、失恋の魔女アーリアです」
「誰が失恋の魔女よ!? 薔薇の魔女よ! しょうび・の・まじょ!」
「茨の魔女とも言います。性格がきついので」
 それだけで、相手がだいたいどんな人物か推し量れる。
「え? しょび?」
「聞いた事がある。いつもバラの香水をつけている、関わった男を不幸にする事で有名な……魔女だと聞く」
 そこまで言って、彼はアーリアの視線に気づく。
「それはただの噂よ。不幸にしているのは、この女の仕業だから」
 熱い視線だった。カロンはその視線を受けてたじろぐ。
「ヴェノム、いつの間にこんないい男を独り占めにしてるのよ」
「いつの間にと言われましても……あらラフィ、どうしました?」
 ラフィニアはとてとてと歩いてヴェノムの足下まで行き、彼女のスカートを引っ張った。
「まぁま」
 ヴェノムはラフィニアを抱き上げた。ラフィニアはヴェノムの胸に顔をすり寄せる。
「……ま、まさかあのいい男と……」
 ヴェノムは否定をせずにラフィニアのほほをつつく。
「お腹がすいたのですね。そういえば、おやつの時間ですね。アーリア、あなたも帰ってその子達におやつでも……」
「おやつはどうでもいいのよ! なによ、私からテリア君を奪っておいて、次はこんないい男となんてっ」
 アーリアは半泣きになって言う。こんなに美しい女性が、なぜそれほど男性にもてないのだろうか。
「特技失恋はまだなおっていないのですね。可哀想に」
「特技とか言わないでくれる!? 運命がないだけよ! 愛人経験しかないくせに偉そうな事言わないで!」
「結婚しない主義の何が悪いんですか。中には普通の恋人もいました。恋人もできない方が言わないでください」
「恋人ぐらいちゃんといたことあるわよ! 人がもてないみたいに言わないで!」
 二人のやりとりにヒルトアリスは顔に血が上るのを感じた。
 二人とも心身共に大人の女性だった。
「えええ、先生にも恋人いたことあるんですか!?」
「どこの悪趣味だよそいつ」
 弟子の少年二人がそれを口にした瞬間、アーリアの拳がその脳天にたたきつけられる。
「可愛げがない子達だね! 見た目も中身もあの女の弟子に負けてるんじゃないわよ!」
「見た目は普通勝てませんよ。なんなんですか、あの美形集団」
「ああ、ムカツク!」
 アーリアは地団駄踏んだ。よほど悔しいようだ。そんな姿も素敵だと思うのだが、男性はそう思わないのだろうか?
「とにかく、この方は私のものです。諦めて帰りなさい」
 ヴェノムはラフィニアを見せつけ突き放すように言う。カロンの方は、顔を青ざめながらじりじりと後退していた。彼はアーリアに怯えているらしい。ヒルトアリスにも覚えがある感覚なので、彼に同情した。ヴェノムの言葉は、そんな彼を守るためのものだ。普段から二人は仲の良い友人同士だ。なんて素晴らしい友情だろうか。
「くっ……って、別にいい男を見に来たわけじゃないのよ! お礼参りよ!」
「あっさり呪われる方が悪いのです。魔道に関わる者としての自己責任ですよ。あなたは確かに優秀ですが、それに溺れていると反撃される事もあると学びましたね。それは何事にも代え難い宝ですよ。私はいつもウェイゼル様に弄ばれていますから」
 ヴェノムの言葉にヒルトアリスは驚いた。彼女が口にしたのは風神の名である。ハウルの父、風神ウェイゼル。彼女の言葉には、なにかいけない背徳的なものを感じた。ヒルトアリスの胸は高鳴ると同時に、締め付けられるような辛さ──切なさを感じた。
「先生、そろそろ本当の目的を言ったらどうですか? とても頼み事をしに来た人間のたいどじゃありませんよ!」
「そーだそーだ。新種の薔薇をもらいに行くって言うから来たのによ」
 新種の薔薇。ヴェノムが株を増やす事に成功したと言っていた、綺麗な薔薇の事だろうか。
 ヴェノムは無言でアーリアを見つめた。
「初めから素直に言いなさい」
「あんたが犯人だと知らなければそうしたわよ! 私がどれだけ苦労したのかわかってるの!?」
「数ヶ月もあれば解けたでしょうに。ウェイゼル様にやられると、本当にといてもらうまでは何もできないのですよ」
「ああ、また男自慢!?」
「別れた男を自慢してどうするのですか。その被害妄想っぷりも相変わらずですね。どうしてそれでカオスの下で学べたのか……」
 カオスとは誰だろうと思った瞬間、ハウルがカロンに囁いた。
「マジで顔だけが目当てだぞ」
「カオスと言えば、サディストで有名なのにな。メディアちゃんはある意味素でそれを上回っているが」
「ある意味いいカップルなんだろうなぁ」
 二人は囁き会う。メディアという少女は何者だろうか。
「カオスさんとメディアさんって、どういった方ですか?」
「簡単に言うと、揃ってうちのババアの弟子の、死と呪いの暗黒年の差カップル」
「いくらなんでも簡単に言いすぎだよ。カオス殿はあれでも今の魔道界を作り上げた立派な賢者なんだから」
 すごい人たちのようだ。そんな事も知らない自分が恥ずかしい。魔道は身近に置いてもとても重要なものなのに、興味を持とうとすら思わなかったのだ。
「カップル!? 私のお師様があの生意気小娘とカップル!?」
「落ち着きなさい。カオスはあれでも間違ってはいるものの一途に彼女を思っているのですから。一次の気の迷いの方がメディアの幸せのためではあるのですが、残念ながら本気のようです」
「あんな口先ばかりの小娘が、カオス様と釣り合うものですか!」
「呪いの腕ではあの子の方が上ですよ。正真正銘、闇の落とし子ですから」
「ああ、カオス様まで。ヴェノム、どこかにフリーのいい男はいないの!?」
「さあ」
 ヴェノムが首をかしげると、アーリアは思い出したようにハウルを見た。ハウルもその瞬間、怯えてカロンの隠れた。
「うちの子はだめです。この子は私の言う事を素直に聞く、私を尊敬する可愛い可愛いお嬢さんでないと許しません」
「なんだよそれ。俺の意志はどうなるんだよ」
「え、脈アリ!?」
 アーリアは即座に口を挟んだハウルへと熱い視線を向けた。
「違う!」
 ハウルは大きく顔を横に振る。何度も何度も。
「うちの孫が怯えているじゃありませんか。薔薇は差し上げますから、帰りなさい。だいたい、そろそろ研究発表の時期でしょう」
「だから来たんじゃない!」
「人の作ったものを利用しないでください」
「香りを幻魔に使うだけじゃないの。香りを媒体にする幻魔師にとっては、新しい花の匂いってのは大切な資料よ」
「わかりました」
 ヴェノムは三人の横を通り過ぎて庭に出る。いくつもの鉢に植えられたつぼみのままの薔薇を一つを選び、庭に出たアーリアへと渡す。
「ありがと。これが咲いているのも見せて」
「こちらです」
 ヴェノムは地に植わった不思議な薔薇を指し示す。それは光を受けてきらきらと輝いているように見えた。
 ──これは薔薇だったのね……。
 魔法の花だと思っていたのだが、まさか彼女の知る名をつけられている花だったとは。
「光をうけて輝くのね。ウェイゼル様みたい。噂通り香りも強いわね」
「一番香りの強いものです。そろそろ来るだろうと思って用意していました」
「……人を呪っておいてよくもまぁ」
「知らなかったと言っているでしょう。文句を言うならその薔薇もアヴェンダにまわしますよ」
「ふん。ありがたくもらっておいてあげるわ。借りを作りたくないから、何かいい物ができたら、あげなくもないわよ」
「その性格が男を逃がしている自覚はないのですか」
「いい男と自分を一緒にするんじゃないわよ!」
「ああ、弟子達が呆れてみていますよ。もう少し威厳を持ちなさい。見なさい、うちの子達は純粋な目で遠くから見守っています」
「遠くからって、関わりを持ちたくなさそうってことでしょ!?」
「まんまぁ!」
 突然、今まで大人しくしていたラフィニアがぐずり始めた。手足をばたばたさせ、ヴェノムの腕から抜け出て空を飛ぶ。空を飛び始めると、彼女の機嫌は一気によくなった。空の快感は空腹を忘れさせたらしい。
「って、有翼人!? ちょっと、どうみてもあんたの子じゃないじゃない!」
「ええと、あちらの彼が有翼人の子孫で」
「子孫でも羽根が生えるわけないでしょ!? さては始祖ね。それ以外あり得ないわ」
「普段の言動がどれほど愚かで滑稽でも、馬鹿ではないところはカオスの弟子らしいところですね」
 ヴェノムは潔く認め、片手に焼き菓子を持ってラフィニアを呼び寄せる。お腹がすいている彼女はそれを思い出し、満面の笑みを浮かべてヴェノムの元に戻る。
「いけませんよ。森は恐ろしいところです」
「んん」
 ヴェノムはラフィニアを抱き、屋敷へと戻っていく。
「行きましょう」
「あ、ああ」
 カロンはさりげなくヴェノムの肩を抱いて屋敷へと戻る。ヒルトアリスはアーリアへとかるくお辞儀をして二人に続いた。最後のハウルはドアを閉めて、鍵をかける。
 そうして、男性二人は大きく息をついて額を拭う。
 素敵な女性に好意を向けられ、ほんの少しうらやましかった。


「結局、あのおばさん誰だったんだ?」
 おやつを食べながらハウルはヴェノムに問う。今日のおやつはスイートポテトだ。カボチャは夜食だ。
「薔薇の魔女。香りを使う手の幻術、呪いの第一人者です。なんと言いましたか、あの時のスケベ親父は香水屋を営んでいたでしょう。香りを利用しておきながら、女性を食い物にするのが許せなかったのでしょうね。自分を振った男に対する恨みからか、料金以上のサービスをしていました」
 逆恨みそのものではあるが、気持ちはわからなくもない。そして、その光景は容易に想像ができた。
「だってよ、ラァス。想像つくよなぁ」
『いや、僕その人見てないから。まぁ、その人のおかげで僕は今この苦労をしているんだなぁと思うと、感謝すると同時に恨めしい気もするんだ』
「恨めしい……って、今度は何してるんだ?」
『聞かないで』
「ああ……まぁ、がんばれ。大変なんだな、神官って」
『いや、神官は楽だよ。サメラ様とかクリス様とかむしろその娘二人とかのせいで苦労しているだけで』
 彼は一体、どんな目に遭っているのだろうか。聞いても答えてくれないだろうから、別の場所から探りを入れよう。
「しかし、苦手なタイプの女性だったよ」
 カロンはラフィニアにおやつを食べさせながら言う。最近のラフィニアは大食漢で、もっともっととねだっていた。夕食もあるので、カロンはめっと叱ってお茶を飲ませる。
「俺も苦手。でも、お前は女に興味ないって言えばいいんじゃないか?」
「ああいう手合いは、私の性癖を知るやいなや、女に目覚めさせてやると意気込んで、恐ろしくて夜も眠れなくなるタイプだ。本当の女の良さを知らないからという考えらしい」
『カロンが女の人に襲われるの……なんかいいかもねそれ』
 ラァスの言葉はカロンには伝えないべきだろう。しかし少なくとも、最初のころに襲われた事は、まだ根に持っているようだ。
「もう二度と来ないことを祈っているよ」
「そうですね。でもそうすると、エインフェ祭は行かないのですか? ラァスも来ると思いますが」
「う…………考えておく」
 カロンは大きくため息をついた。
 ついこないだ別れたばかりだが、メディアは元気にしているだろうか。
『エインフェ祭かぁ……僕行けるかなぁ』
「来ないのか?」
『僕が行ったらアミュも来るでしょ? そうすると必然的にアミュを気に入っている僕の上司達が……』
「う……」
 ハウルは言葉をつまらせた。気にするな来いとは口が裂けても言えない。
「…………が、がんばれ」
『うん。頑張る』
 そうして、向こう側のラァスもため息をつく。
 彼らの回りの女は、なぜ皆揃って嵐のような性質なのだろうか。

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あとがき