14話 姫君の家出
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水面から顔を出し砂浜の方を見ると、水辺で遊ぶ人影が見えた。
その中に後光が差して見える頭を発見し、セルスはハウルがいることを確信する。つまりは他のヴェノムの弟子達──ヒルトアリスもいるのだ。
急いで浅瀬まで向かい、腹ばいになってしまう場所まで来ると身を起こして手を振った。
「皆さんっ!」
ヒルトアリスが振り返り、靴を脱いでスカートをたくし上げてかけてくる。
「セルスさんっ」
「ヒルトさん、お久しぶりです」
「ごきげんようセルスさん。なぜ腹ばいになっていらっしゃるの?」
「水に濡れていると変身でないんです。このまま進むと砂だらけになってしまいますから」
「まあ」
ヒルトアリスは突如スカートの裾を結んで海水に触れないような長さにして、セルスの手を取りいとも簡単に抱き上げる。
「ひ、ヒルトさんっ。岩場に回りますから!」
「お任せ下さい。力はあるんです」
力はあると言っても女性がだきあげるのだから、どうしても身体が密着するような抱き上げ方だ。彼女の服が濡れてしまった。
あわあわしている間に砂浜につき、サメラに手招きされて彼女の椅子に座らされた。尾びれを人のいない方に振って水を払い、魔力で水分を蒸発させてから足へと変化させる。
ヒルトアリスも濡れた服を乾かしていた。
アヴェンダがセルスの前に仁王立ちして彼を見下ろす。友人の服を濡らしたから怒っているのだろうか。女性は服を汚されると怒るらしい。
「あんた、下着は?」
「え、パンツのことですか? 尾びれがあるのではくのは無理なので」
腰に布を巻いてはいるが、身体の構造上から人間のような下着は身につけられない。
「その分、服はしっかりと着ています」
「いいけどねぇ。でも陸に上がるなら下にはくものは持ち歩いた方がいいと思うよ」
「そうですか……。わかりました。今度からそうします」
うっかり水がかかったら破れてしまうのだが、人間の中に混じるなら人間らしい服装に心がける必要もある。
面倒だからと手を抜いてはいけないのだ。
「ハウル様、今年は誰も釣らないようにしてくださいね」
「だったら俺の釣り場に寄るな。それより、その指輪どうしたんだ?」
セルスは自分の手にある指輪を見た。装飾品の価値は分からないが、石が綺麗で海の中でも劣化しにくいらしく気に入っている。
「街で知り合った人間に頂きました」
「男?」
「はい。私が人間でないと知っていても友人でいてくれる、親切な方です」
「お前、天然も大概にしておいた方がいいぞ。希望を持たせるな」
「何の希望ですか?」
「恋人がいますって言っておけ」
「ええっ?」
「いいから」
真剣な様子で言う彼が何を心配しているのか分からない。
話からすればセルスが恋愛の対象になっているように聞こえるのだが、二人は男同士だ。しかし男性が好きだという男性もいる。それを心配しているのかも知れない。
彼は本当に心配性だ。
「大丈夫ですよ。それよりも、せっかく遊びに来ていただいたのに申し訳ありませんが、海に入るのは少しの間控えてください」
「どうしたんだ? また去年みたいなのが出たのか?」
彼は顔を顰めて頷いた。
去年の怪物はアミュが退治してくれた。思い出すだけでもぞっとする。
「今年のはあれよりは手の打ちようがありますが、数が多いんです。女性の方ばかりだと、守りきる自信が……」
「いやぁ。この中で守らなきゃいけないちゃんとした女の子はアヴェンダぐらいだぞ。他は一人で行かせても自分もしくは周囲が何とかするタイプだから」
「そ、そうなんですか?」
ハウルは即座に頷き、アミュも少し戸惑ってから頷く。一見気の強そうなアヴェンダが一番か弱い女性という認識なのには少し驚いたが、人は見た目で判断出来ないものだ。
何かいい娯楽を提供できない物かと悩み、そうこうしていると海の方から破裂音がした。仲間の合図だ。セルスはため息をついた。
少しの間だと言ったが、すべて処分しきれるかどうか不安がある。
「また出たようです。お待ち下さい」
「俺も行く」
「わ……私も行きたいけど……」
アミュは泳ぎが苦手だ。去年はさりげなく彼女の手を引いたりとフォローをしていたラァスがいた。しかし今年はいないというか、彼からも隠れているせいでアミュの言葉尻が小さくなっていく。アミュが泳ぐのが苦手で、サメラが風邪をひきやすい体質だと、言われるまでもなく浜辺で遊んでいてくれたほどだ。
「お前らは屋敷に戻ってろ。ファーリア、頼んだ」
「はい。お任せ下さい」
「ルート、お前は来るなよ。ラフィ達と遊んでろよ」
「わかった」
セルスはハウルを伴い海に戻る。水に入った瞬間足が元に戻り前のめりに倒れる。浅すぎるので這って前進していると、呆れた様子のハウルが小脇に抱えてハウルの膝ほどまである場所に連れて行ってくれた。
人魚というのは本当に不便な体質だつくづく思う。
ヨハンの入れた茶の香りを嗅ぎ口に含む。ヴェノムに出すせいか、王室に入れても問題ないほどいい葉を使っている。お茶請けの菓子はおそらくサメラ達が土産に持ってきたのだろう、有名店のクッキー。特色のあるクッキーが一つ混じっていて、カロンの気に入りだ。
「おちぃ」
「ラフィニア様はご機嫌でございますね」
可愛らしい仕草でクッキーを食べるラフィニアを見てヨハンが微笑む。彼には時折ラフィニアを預かって貰ったりと世話になっている。
ヴェノムがダメなときはハウル達に任せればいいのだが、様子を見ていると変なことを覚えないかと不安になるのだ。ヨハンなら安心して任せられる。
「ああ、申し訳ありません。話は元を戻します。
私が海に潜ったところ、去年目撃されたのとはまた別の、事典にも載っていない魔物でした」
「仕留めましたか」
「はい。そこの床下収納に保存してあります」
「そんなところにそんなものを保存しないでください」
「温度調節が出来るので、ここが一番かと」
ヨハンは収納の取っ手に手をかけて外していく。三つの板を外し終えると、中からは冷気があふれ出し、そこから大きな魚を入れるための箱を取り出して再び蓋を閉める。
恐る恐る覗き込むと、魚人にも似たドス黒いまだら模様の不気味な生物。
「既視感を覚える不細工さだ」
「…………去年のあれと似たような系統の不気味さですね」
ヴェノムが顔を顰めて手を振るので、ヨハンは心得た様子で蓋をする。
「これが既に十匹ほど処分されているそうですが、まだまだいるようです」
カロンは想像してぞっとした。十匹いるなら百匹ぐらい潜んでいてもおかしくない。
「私の海をこんな物で汚すなど、どこのどなたでしょうか」
「明らかに人の手を加えられているね。趣味が合いそうにもない」
カロンが作ったことがあるのは、見栄えはすばらしく優れているノーラだけ。彼女はそういう意味ではまさに傑作と言っていい。こういうゲテモノを好んでいたのはむしろ──
「殿下、どうなさいました。心当たりでも?」
「……上の弟が、そういえば怪しい生物を作るのが趣味だったような気が」
「ああ、あの暴走中の?」
「そう。暴走中の方。馬鹿の方は問題外だ」
「しかし彼は暴走に忙しいのでは? 逆らう者を皆殺しにしている最中でしょうに」
「それに忙しくてずさんな管理をしていたのかもしれないな。どちらにしても命令を聞かなくて醜い生物なら誰にでも作れる。まったくもって出来の悪い弟だ」
「殿下が厳しいから反発するのではありませんか」
「私があれを嫌うのは、命を狙われ続けた結果だ」
本当の妹の方のラフィニアも、おそらくあれの関係で殺された。あれが直接手を下したとまでは思いたくはないが、その関係者であるのは確実だ。嫌う要素はあっても、優しくしてやる要素などない。
「原因が何だったとしても、処分しなければならないことは確実だ。あの足ではまだ地上を歩くのは難しそうだが、浜辺でもラフィを遊ばせることが出来なくなる。キーディアとアヴェンダにとっても危険だな」
他は何に襲われても問題ないだろう。ヒルトアリスには精霊という味方がいるし、他は心配するのも馬鹿らしい。考えるだけ無駄だ。
「ラフィ。カニさんやヤドカリさんと遊ぶのは待っていてくれ。兄が綺麗にお掃除してくるからね」
あんな悪趣味な生物を杜撰な管理下で作る人間など、世の中広と言えどもそうはいない。弟の作品である可能性が高いなら、仮にも兄としては放置できない。
手を考えないといけないが、水中というのが大きな妨げとなる。抵抗もあるし、周囲を巻き込みやすい。生態系を壊しては彼らが動く意味もない。それを考えなければ誰にでも出来る。
「人魚達も何人か犠牲が出ているようです。可能な限り協力はしているのですが、水中では私など役にも立てません」
「群れているなら、潜んでいる場所があるだろう」
「以前発見したときは、魚のように砂の中に潜って隠れていました。周囲に色を合わせる事も出来るらしく、人魚達にとっても厄介です」
砂の中にいるのでは本当に無闇な攻撃が出来ない。厄介な生物である。何を混ぜたのか弟をこづき回して問いつめたい気分になる。
「足っぽいものがあるくせに、生態は魚と」
尾びれのようなものが多少硬質化した雰囲気だから、歩けるまでには進化していないと分かるのだが、そこまで魚らしいと呆れる。
「だから撲滅するには、時間が掛かると思われます。地道に一匹ずつ撲滅するしかありません。餌で集めれば一度に多く仕留められるのですが、生きた餌でないと集まらず、大量にいるとこちらも手の打ちようがなく……」
「そうですか。集まってくるのですね。では手はいくらでもあります」
ヴェノムは冷静に言い、赤い唇に指を添えた。
さすがは年の功。
「ほう。どのような?」
「アミュとハウルを檻の中にでも入れて沈めればいいのです」
カロンは自分の耳を疑い、何度も聞こえたような気がした言葉を反芻したが、同じ結果に行き着いた。
檻に入れて沈めると。
「…………ヴェノム殿」
「アミュも最近は叩いても壊れないような子になりました。弟子の成長は嬉しいですが、寂しくもあります」
彼女は遠い目をして窓の外を見る。その視線を追い、先ほどまでいたはずの子供達の姿が見えないことに気付いた。海に潜ったということはないだろう。先に来て事情を知るはずのアミュ達がいる。
確かに叩こうとしても叩けないほど強い魔力を持っているし、最近はそれに見合う精神力も身につけている。一人の魔道士として一流と評価できるほどにあの短い期間で成長した。
しばらく海を眺めていると、近づく複数の足音が聞こえた。
「お姉さまっ」
ヒルトアリスが部屋に飛び込み、今にも泣きそうな顔をして訴える。
「大変です。セルスさんとハウル様が、よく分からないけど危険な生物とっ」
「落ち着きなさいヒルト。話は聞いています。あの二人なら問題ありません」
ヒルトアリスはヨハンに差し出された水を飲み、ふぅと息をつく。その頃にようやく他の面々が追いついた。
「アミュいいところに着ましたね」
「ちょ、ヴェノム殿、あれは本気だったのかっ!?」
「私はおおむね本気です。
アミュ、徹底的に強化した檻の中で、餌になってみる気はありませんか」
彼女は一瞬きょとんとして、カロンと同じほど時間をかけて理解して顔色を変えた。
「ええっ!?」
アミュは珍しく大きな声を上げて後ずさる。驚くのも無理はないし、嫌がるのも無理はない。カロンは未知生物の中に突っ込めと言われれば、何が何でも辞退する。
「心配入りません。ハウルも一緒に押し込めます。そこで集まってきたら、去年のように茹でてしまってください」
「で、でも……」
「相手は人工的に作られた生物。サギュ様が動くほどではないようですが、放置して大変なことになっても厄介です。もしも嫌でしたら、こういう時こそ日々を無駄に過ごしている馬鹿神二人のどちらかを召喚して顎で使えばいいのですが」
「え……あの……や、やる」
アミュが視線をそらしつつ、実の父親が来るのが嫌なのか引き受けた。まだあれを見ていないからそんなことが言えるのだろう。ヴェノムは年を取りすぎて不快という以上の感想はないらしいのが厄介だ。アミュのトラウマにでもならなければいいのだが。
「では、明日に決行しましょう。クロフ、女王陛下に明日の人払いを。場所も相談してきてください。今のアミュなら範囲を限定した温度調節が出来るでしょうから、他の生物が巻き込まれることはほとんどないと思います」
「了解しました」
姿はなく声だけが響いた。
これほどの精霊に好かれてみたいものだ。ノーラを作る前はそれなりに精霊から慕われていたのだが、彼女を作ってからは魔力を行使して使役するしかなくなった。
後悔はしていないが、ノーラは反抗期の最中で従順とは言えないので不便は増えた。
「ところでノーラとキーディアは?」
「あの精霊娘はわらわには近寄りたくないのじゃろう。ハウルの竜が側にいるから案ずるな」
サメラがつまらなさげに言った。女神が出ているかどうかの見分けをつけにくい子だが、今は人間だ。無意識の言葉だろう。
「同属性同士で好いても良さそうなものだが」
ラフィニアは殺され書けたのに全身で好意を示している。時の精霊である彼女にとって、サメラは仕えるべき神なので、避けるというのは少し意外だった。
「まったくじゃ。この美しいわらわを見て離れるとは」
「素直ではない子だから」
カロンは立ち上がり、ノーラと彼女を心配してくれているのだろうその友人と、育ての親に似た幼い竜を探した。
ハウルは自分が真っ二つにした不気味な生物を見て、既視感を覚える。
「ああ、去年と同系統」
「はい。去年ほどの衝撃はありませんが、不気味でしょう。シルエットがなんとなく人間に似ているからよけいに。女性には見せられません」
ハウルはちらと横目でセルスを見た。
お前が一目惚れした女はレズビアンだと言った方がいいのだとは分かっている。それが友情というものだ。
しかしヒルトアリスにその惚れっぽさを直せと言うための実例として示すには、彼はちょうどいい人材だと冷めた目で見ている自分もいる。ヒルトアリスが独り立ちするまでに、なんとかこの悪い癖だけは矯正しないとと考えてしまうのだ。ハウルにとってヒルトアリスはどれほどの変わり者であっても、可愛いことには変わりない。
「まだいるな」
「そうですね」
「繁殖は常にするのか?」
「さあ。ただ、成長の段階は分かります」
「どんな?」
セルスは死骸の足を指さした。
「成長すると足が生えてくるんですよ。で、イルカのように水面に呼吸をしに行く必要が出てきます」
「蛙か、こいつらは」
「なんですか、それ」
この海には蛙がいないので、セルスは知らなくても仕方がない。なら本当に先入観なく、観察したままの事を言ったようだ。
「そんなわけで繁殖をしそうな大人を見たらすぐに始末するようにしているのですが、人魚も数が多いわけでないし、一人でいると集団で来るようで逆にやられるんですよ」
「群れるのか。わけわかんねぇな」
ハウルは頭をかき、水に舞う髪が鬱陶しく首を振る。また髪が伸びてきた。切って貰わなければ。
これ以上のことはここで考えてもらちがあかないので、死骸を魔力で水面上まで持ち上げ、自身もそれを追う。
水面に出てとりあえず砂浜に捨てると、手を向けて呪文を唱えた。
「静かなる者 くすぶる者
我が魔力糧に荒ぶる性のまま飲み込め」
炎がそれを包み込み灰と化す。埋めてやるのも面倒だし、そのままでは気の毒だ。呪文を久々に唱えたことに気付き、自分の能力ばかりに頼った力の使い方に甘えていたと反省する。神としての力は解放すればもっと強い力を扱えるが、他がおろそかではただの中途半端な神もどきになってしまう。人間としても一流の魔道士になれば、神の血を引いただけの半端な神でもそれなりの神になれるのだ。
「お前のおふくろの所に行くか」
「はい」
話を聞いてヴェノムに報告しなければならない。ここはヴェノムが管理する場所だ。管理するというのは、外敵の排除も含まれる仕事である。
再び海にもぐり、人間の眼では見られない水泡漂う宮殿へと足を踏み入れた。周囲への挨拶もそこそこに奥へ奥へ向かうと、女王の間を守る人魚達の敬礼を受けて部屋の中へと入る。
「おお、ハウル様」
相変わらず美人な人魚が海産物でできた玉座に腰掛け、クロフと向かい合って話していた。水と風の相性はいいため、クロフは彼らから受け入れられている。ヴェノムの使いとしてよく来ている。
「どうかしたのか?」
「ヴェノム様の命により、明日の準備を」
「明日? もう話が進んでるのか?」
「はい。貴方とアミュ様を檻に入れて海に沈め、集まったところを殲滅するという」
「まてっ」
ハウルは思わず声を荒げた。
聞いていない。というか、なんなのだその無茶苦茶な作戦は。しかもアミュまで巻き込まれている。
「牛の一頭でも生きたまま一緒に沈めればそちらに寄ってたかるでしょう」
「さらっと可哀相なこと言うんじゃねぇよ」
「生き餌でなければ意味はありません。少し傷を付けておけば、血の臭いで集まると思います」
話を聞いていないのか、あえて無視しているのか。彼はヴェノムの命令ならハウルが何を言っても遂行するだろう。話など聞いてくれるはずがない。
「なあセルス。それで小さいのも引きつけられると思うか?」
「さあ。大きな物を襲うのはほとんど大人に近いものですから」
「それでもさっさと始末しないとな。大人になったら、たぶん陸に上がってくるぞ」
ハウルの言葉にセルスは硬直した。
足が出来る。蛙に似ている。だとしたら足が出来上がったら陸に上がってくるだろう。
「ハウル様、それは本当ですか」
「ああ。大きくなって肺呼吸に切り替わってるらしい。だったら出てくるだろ。足あるんだし」
クロフが顔を顰めて考え込む。動揺したセルスはハウルの肩を掴んで騒ぎ始めた。
「た……大事じゃないですかっ! あんなのが人間を襲い始めたらとんでもないことになりますよっ!」
「大事だよ。下手に陸なんかに行ったら、人間がここに押し寄せて何をしてでも根元を絶とうとするぞ。
だからこれは俺達だけの問題じゃない。当面の処置で明日の作戦は実行するけど、それでも何度かしないと意味ないな。それにこれだけいるってことは、もう成長が終わった親がいると思う。だから陸にいるっぽいそっちも何とかしないと、人間の里襲われるぞ。人魚と違って弱いから簡単に全滅するし、そうなったら本当に殲滅作戦に出るぞ」
想像すると夜も眠れなくなりそうだ。海の中は外に出さないようにしらみつぶしにしながら、他の面々には陸の捜索をさせないとまずい。
「クロフ。ここは俺が話しつけておくから、お前はファーリアさん達に手伝って貰って、陸の方頼む。あいつらそういうの慣れてそうだし」
サメラはいつも無意識のうちに全ての配置を行っている。彼女がここにいることも必然と考えると、ハウルは彼女の駒の一つとして考えて動かなければならない。
彼女は時の女神だ。采配こそが彼女の力。
「ラァスを拒むって事は、このメンバーでどうにかなるって事だろ。気合い入れてやるか」