8話 我が家に出た魔物


「ケイちゃん」
 いつものごとく人の家に上がり込み、ごねて夕飯まで食べてくつろぎ始めた大樹は、慶子の耳元で囁いた。
「だいぶたまってるんじゃないか?」
 慶子ははっとして身を強張らせた。
「どうなの?」
「……ほ……ほっといてよっ」
「無理しちゃって……顔赤いよ」
 大樹はイジワルににやと笑う。
「ケイちゃんの身体は、俺が一番よぉく知ってるんだ。ケイちゃん、そろそろしたいんじゃない?」
 慶子はうっと唸り反論することも出来なかった。
「だ、だからほっといて」
「ほっとけないよ」
「どうしてっ!?」
「だって、俺ケイちゃん好きだし」
 慶子はとりあえず腰に回された大樹の手をつねる。
「俺に任せれば、すっきりとするよ。どれだけ気持ちがいいか、ケイちゃんも知ってるだろ?」
 知っている。彼がどれだけ上手いのか、この身が知っている。この身はそれを覚えて、うずいている。彼に身をゆだねていた、無邪気な頃の自分。あの頃の自分は愚かだった。恥も外聞もなく、彼を信頼していた。気持ちがいいからと、自分を甘やかしていた。なんと愚かっだったのだろう。その当時、こいつがここまでの女好きだとは知らなかったから。中学が違ったのだから、知らなくとも仕方がないではないか。
「あの……一体何のお話で?」
 突然テレビを見ていたディノが言う。フィオもテレビから目を離し二人を見た。二人が見ていたのはクイズ番組だ。面白いらしい。
「ケイちゃんの一週間に続く便秘を解消してあげようかと」
「言うなお前はっ! しかも何で日数まで分かるのよ!?」
「いやぁ、ケイちゃん出た次の日は分かりやすいから」
 慶子はぐぅと唸る。
 屈辱だ。
「ほらほら。マッサージしてあげるよ」
「嫌よ。あんた手つきがやらしいもの。ついでに変なところ触ってくるし」
「それが役得ってもんだよ。俺ケイちゃんの身体大好き!」
 慶子は大樹を殴り倒し、立ち上がる。
「うが……きいた……。ケイちゃん……一体どこにいくの? まさか地下室……」
「お風呂よ!」
 食物繊維を取って、御風呂に入って……
「風呂あがりにマッサージはよくきくよね」
 一瞬血迷いそうになる自分を叱咤し、慶子はリビングを出た。
 思い出すのも腹立たしい過去がいくつも頭に思い浮かぶ。
 慶子は脱衣所に入ると、迷わず黒のセーターを脱いだ。カシミア素材が好きなのだが、身体にぴったりしているものが多いので、厚手でだぼっとしたアクリル素材の安物のセーターを着ている。下着も安物だ。今は安い店でも大きめの可愛いブラジャーが置いてある。多少きつい感じはするが、こればかりは仕方ない。しかし何かと便利な世の中になったものだ。
 慶子はセーターを洗濯かごの中に入れてから気付く。
「何これ」
 変なものが洗濯籠にかかっていた。太さ物干し竿ほどの、ひも状の物体。洗濯籠を持ち上げると、なにかがぼとりと落ちた。


「きゃあああああああああああっ!」
 絹を引き裂くような悲鳴とはこういうものを指すのだろう。慶子の甲高い叫び声が響き渡った。
「ケイちゃん!?」
 またまた浴室の窓の隙間から変質者が覗いていたのだろうか。それとも変質者が浴室にいたのだろうか。それともまたゴキブリだろうか。慶子は変質者以上にゴキブリが大の苦手だった。
 前者の変質者なら大変なので(相手が殺される可能盛大)、大樹は全力で駆ける。ディノと最後にフィオが続く。
 脱衣所から逃げ出してきた慶子は、なりふり構わず大樹の腕に飛び込んだ。上半身に身につけているのはブラジャーだけだった。
 大樹は喜んで彼女を抱きしめる。あまり接近すると肝心の部分が見えないのだが、今はダイレクトに伝わる胸の感触を楽しんだ。
「よしよし、どうしたのケイちゃん」
 その状況に顔をにやつかせらながら大樹は問う。しかし慶子は予想だにしになかった言葉を発した。
「これ……これとって」
 大樹は顔を顰めた。ゴキブリなど身体にとまったとしても、動けばすぐに逃げるだろうに。
「これ?」
 肩越しに慶子の足元を見る。片足を上げてこれと訴える慶子。大樹は己が目を疑った。
 軟体動物……と言えばよいのか。スライム……というには、グロすぎる。肉色だった。肉の塊のようなものから、うねうねと奇妙な足のようなもの……あえて言うならそう、『触手』のようなものが伸びており、その中でも特別長いものが慶子の足に絡み付いていた。
 慶子の足に引っかかるそれは、慶子の震えにより宙で揺れてその口を見せた。
 足だと一瞬思ったその短い触手の中央に、気味の悪い口が開いていた。
「ひっ」
 さすがの大樹も驚き、腰を抜かしかけた。寸のところで立ち直るが、恐怖と、生理的嫌悪感から後退せずにはいられない。
「何で逃げるの!?」
「ケイちゃん好きだけど、そういうのとセットだとさすがにマイナス」
「何よそれ!? あたしのためなら死ねるとか言ったのはどの口よ!」
「それはもう何年も前の話し! 俺ケイちゃんのためならほとんどのことはするけど、そういう触手に絡まれるのは嫌だ!」
「もしあたしが何か変なことされたらあんたどうするつもり!?」
「それはちょっと悲しいけど、ケイちゃんのあれとかこれとか諦めて、大人しく傍観してるから」
「くぬっ! ならば死なばもろとも一蓮托生! あたしの不幸はあんたの不幸!」
 慶子は大樹に抱きついて放さない。慶子の力は弱くもないが強くもない。しかし慶子を引き離そうとしても、巧みにしがみ付いてくる。何かコツがあるようだ。武術を習う彼女には、容易なことなのかもしれない。
 しかし大樹も必死だ。気色悪いものは気色悪いのだ。見たところ暴れないし、触手で慶子にしがみ付いているだけである。大して害はなさそうに見えた。とにかくただただ気色悪いのだ。
「きゃああああ、のぼってきたぁ」
「なにぃ!? ケイちゃん、マジで離せって!」
「いぃぃいやぁぁあ」
 二人がじたばたとしていると、
「オーリン!?」
 突然フィオが呟き、慶子の足元にしゃがみ込む。
「やっぱりオーリン! どうしてお前こんなところに!?」
 フィオは不気味な触手生物を慶子の足から引っぺがし、愛しげにほお擦りをした。
「ふぃふぃふぃフィオ!」
 ようやく大樹から離れた慶子は、距離をとりつつフィオへと声を掛けた。
「いい子だから、その肉の塊を捨ててらっしゃい」
 怯えきった慶子は、とんでもない発言をした。
「ええ!?」
「ケイちゃん! あれを世間に放り出すって言うのか!?」
 大樹はあまりにもの無責任さに驚愕した。あれが世間に解き放たれれば、どんなパニックに陥るか想像もできない。
「じゃああんたが回収する!?」
「フィオちゃん、なんの躊躇いも迷いもなく、トイレにある黒いゴミ袋にでも詰め込んで、殺虫剤を中に吹き込みまくってからゴミ捨て場に出してこい。たとえ神が許さなくても、明様が許さなかったとしても、俺が許す」
 フィオは触手生物を抱きしめてびくりと震えた。触手はフィオの顔をなでたりと、それはまるで触手に襲われて怯える美少女である。
「オーリン……捨てる?」
 オーリンと呼ぶにはあまりにも不気味なそれを、フィオはぎゅっと抱きしめ庇うような仕草をした。
「大樹殿、それはいくらなんでも……。
 確かにあなた方にとっては、見慣れぬ生物でしょう。私も滅多に目にかけることはない聖獣です。あまり見ない変わった生物なので、慣れるまでには時間がかかるかもしれませんが、決して害はありません。もちろん人を襲ったりはしません。草食の大人しい生物です」
 慶子の口があんぐりと開く。
「せ……聖……」
 あれを聖獣と崇めるなど、天使とはどのような感性を持っているのだろうか。
「何よりも、オーリンはフィオ様にとって大切な友人なのです」
「ゆ……友……」
 慶子は大樹の背に隠れ、小さく何かを呟き始めた。
 大樹自身、信じられずにそれを見る。
 触手は現状長い二本が見えている。やはりグロテクスな肉色。そう、SF映画などでよくあるエイリアンの一部とか。よくあるテレビゲームのクリーチャーとか。そんな雰囲気の肉色である。さしずめフィオはそれに襲われる不幸なヒロイン。これで大人向けなら、あんなことやこんなことをされる可能性も……。
「…………慶子……オーリンの何が気に食わないのだ?」
 フィオはうるんだ瞳で大樹を見た。大樹越しにいる慶子をその純粋な眼差しで捕らえる。
「見た目」
 慶子は大樹の背から顔を覗かせ、一切の躊躇もなく呟いた。
「なぜだ!?」
「グロい」
 慶子はそれだけ言うと再び隠れた。よほど恐いのだろう。当然だ。慶子はホラー映画やホラーゲームが苦手である。
「こんなに可愛いのに」
「あんた正気?」
「今回はケイちゃんにすべて同感」
 フィオは大きく目を見開き、それからその『オーリン』を抱きしめた。うのうのと伸びる触手は、フィオを締め付けるように抱きしめた。
「オーリンは私にとって、唯一の友達なんだ。それに賢いんだぞ。こんな所まで私を追ってくるなんて……。
 人間界は異形の存在に冷たいと聞いたが、慶子達まで拒絶するとは……。
 だから置いてきたのに。なぜ来たのだ馬鹿者」
 オーリンはありえない奇妙な「うぃうぃ〜」という感じの鳴き声を発した。鳴き声と言うよりも、身体のどこかが震えて出ている音という感じだ。
「きもっ」
「あの口からどうやってこの音出してんだあの触手」
「触手言わないで、よけいに気持ち悪くなるじゃない」
 慶子は再び背から顔を出し大樹に苦情を述べた。
「慶子、オーリンのどこが『きもい』のだ!?」
「だからぁ、その色。形。触手、すべてよ!」
「じゃあ、どんなだったらいいんだ!?」
「犬とか猫みたいなのだったら別にいいけどねぇ、あたしゃあ可愛くない生物は大嫌いなのよ」
 慶子は可愛いものが好きだ。少女趣味な母親とその親友に育てられた結果、かなり少女趣味に育ってしまった。部屋もぬいぐるみと人形で溢れかえっているし、服もレース使いのものが多い。もちろん、慶子は自身はふりふりのワンピースなど着たりはしない。自分に似合う範囲で多少フリルの付いたりとする、フェミニンな格好をしている。フィオには昔着ていたとにかく可愛い洋服を着せている。もちろん外に出られないほど非常識なまでに可愛いものではない。リボンやフリルの使われたトップスや、可愛いフレアスカート。慶子の服をもう少し『可愛く』したようなものだ。外を出歩いてもおかしくはないが、変な男は大量に釣れそうな格好である。
「犬みたいならいいのか?」
「まあねぇ。隠さなくてもいいようなのだったらマシだけど」
「じゃあちょっと待て」
 フィオは大樹と慶子の二人の横を通り、リビングへと向かう。その際、慶子と大樹は壁に飛びつきその触手から精一杯離れた。ディノもその後を追い、ようやく二人だけとなりほっとした。
「……何する気なのあの馬鹿は?」
「フィオちゃんの頭のねじ、一、二本外れてるからなぁ。見に行けば?」
「嫌よ! 嫌嫌嫌! 今はあの部屋に近付くのも嫌」
 慶子は大樹の背中からようやく身を離した。大樹は勇んで慶子へと向き直る。
「じゃあ、ケイちゃんの部屋に行こうか。うん、そうしよう」
「え……」
「でもさぁ、ケイちゃん。やっぱ少しブラきついんじゃないの? 胸んとこすげぇ食い込んでるよ」
「っ……きゃあああああ!」
 慶子は大樹を殴り倒してフィオ達が戻ったリビングへと駆け出した。
 ──俺に身体見られるより、あの天使二人と触手の方がマシだって言うのか……。
 床に伏した大樹はほんの少し傷つきながら、フローリングの床の冷たさに凍え起き上がる。
「ケイちゃん、ほんとしっかりしてるんだか間抜けなんだか……」
 ああいった欠点があるからこそ、人なのだが。
 だからあれは、愛すべき彼女の美点だ。


 部屋に入ると、フィオは触手を抱えてテレビをじっと見ていた。
 慶子はおびえながらも脱ぎっぱなしにしていたコートを羽織る。
「フィオ……何呑気にテレビ見てるのよ」
「違う。探して……あ、出た!」
 フィオはテレビに出てきたトイ・プードルを見て叫ぶ。キャンキャンと鳴く姿が、抱きしめたいほど可愛いそれを見て、フィオは指差し。
「これだ。これ。これなら慶子は許してくれる」
 慶子はディノの背後に隠れながら、奇妙な会話をするフィオを見つめた。触手は極力視界にいれずに。
「そうそう。もっと毛がふわふわしてる方が多分慶子の好みだ」
 慶子はフィオの背中を見つめた。彼が邪魔で、一体何が行われているのか見えない。
「……うむ。よし。これなら慶子も許してくれるだろう」
 フィオは振り向き、それを掲げた。
「これでどうだ!」
 それはまるで、くまのぬいぐるみ。愛らしく首を傾げる様は、まるでテディベアに命が吹き込まれたよう。
 テディベアカットのトイ・プードル。
「…………」
 可愛い。正直、かなり可愛い。超激烈可愛い。
「な……なにあれ」
「オーリンは変幻自在です。普通『オロバロト』は何かに擬態した状態で過ごします。フィオ様の側にいて、危険に身の晒されることのないオーリンは、擬態を滅多にすることはありませんが、常にあの姿擬態したで過ごすことも可能です」
 いつもあれ。
 慶子は腕組み、うんうん唸り。
「んじゃあ……言った手前もあるし可愛いから……」
「ケイちゃん正気!?」
 顔を少し赤く腫れさせた大樹が、リビングの入り口で声高に叫んだ。
「中身はあれだよ!? 触ったらぷにぷにするかもよ!」
 慶子は言われてみればと思い、オーリンに近寄った。じっと見つめてくる瞳は犬そのもので、犬好きの慶子は悩殺されかけた。
 しかし触ってみるまでは分からない。
 恐る恐る。
 汚れなき新雪に触る気持ちでそれに触れる。
 ふわふわしていた。恐る恐る額を撫でると、尻尾を振って好意を示す。
「ケイちゃん!? 今飼ってもいいかとか思ってないか!?」
「だ、だだだだって、可愛いものっ」
「中身はあれだぞ。あの口見ただろ!? あの触手に絡まれただろ!? キモかっただろ!?」
「う……」
 慶子は頭を抱え込んだ。そんな慶子に、フィオがオーリンをさらに近づけた。このトイ・プードルがまだ子犬でさらに可愛いのだ。それを抱きしめるフィオも可愛い。可愛いものが可愛いものを連れてやってきた。
「だめ?」
 フィオにつられて悲しげに見つめるそれのあまりにもの愛らしさに、慶子はハートを矢で打ち抜かれた気すらしてきた。
「ぜ……絶対にこのまま?」
「ああ。もちろんだ。この世界では、オーリンはこういう姿の方が過ごしやすいだろう。それにこういうのも可愛いから私は好きだぞ。
 慶子がもし他のがいいのなら、参考になるものを見せればいい。好きな姿になってくれる。好きなように要望を言え」
 慶子は考えた。
 可愛いものをとっかえひっかえ。なんて理想なのだろう。元があれでなければだが……。
「まあ、害がないんならいいけどねぇ」
「やった」
 フィオは飛んではしゃいだ。滞空時間が長いので、本当に飛んでいるのではないだろうかとすら思えた。
「け……ケイちゃん、君は見た目がよければそれでいいの!?」
「こんなの、世間に晒せないし仕方ないでしょう!? それともあんた持ち帰る!?」
「うちには山のように犬がいるから却下」
「じゃあ仕方ないでしょ! 我慢できそうだったら、置いてやらないとフィオがかわいそうでしょ!?」
「でもでも、人として」
「ひどいやつねぇ、あんた」
「ケイちゃんが言う!?」
 大樹は迷いディノを見たが、しかしすぐに諦める。ディノの目は、喜びはしゃぐフィオに釘付けだった。孤立無援となった彼は、可愛いトイ・プードルを眺めてから。
「ケイちゃん、いろいろと……イロイロと気をつけて! じゃ!」
 意味不明の捨て台詞を残し、大樹は去って行った。


「結局、こいつなんでうちの浴室にいたの?」
 慶子はオーリンに首を首輪を装着させながら呟いた。この犬種はとても高価だ。しっかりと管理せねばならない。
「……さぁ。私達と同時期にこちらに来たのは確かだと思うが……。
 オーリンは暗い場所が好きだから、物置にでもいたんじゃないか? 水が欲しくなって風呂場に入り込んで、暗い洗濯機の裏に入り込んでいたんだろう。よく人の部屋のタンスの裏に忍び込んでいたものな。まったく人騒がせな奴め」
 フィオがつんとつつくと、オーリンは触手の一本でその手を絡めとる。
 慶子は笑顔でオーリンにナイフを突きつけた。
「何度言ったらわかるのかしらねぇ? だからぁ、そういうのを今度出したら叩っ切るわよ」
 オーリンは触手を引っ込め犬のフリを続けた。
「そうそう。それでいいの。おりこうさんねぇ」
 慶子がナイフをしまうと、怯えてフィオに背に隠れる化け物。
「慶子……慶子は時々本当に恐いな」
「気持ちは分からなくもないですが、確かに過激すぎますね慶子殿は。しかし、実際に甘やかしはよくありません。これはオーリンのためです。フィオ様もテレビを見ていれば分かるでしょう」
「ああ。この界の者は異物を根絶したいと願っているようだ。私達も正体が知られれば、このように穏やかな生活など到底無理だろう。
 でも……やはり知られたら……オーリンは解剖されるのだろうか……」
「その可能性も……」
 どんなアニメを見たのかが慶子には非常に気になるところだった。どんなアニメであっても、非常にベタな展開であることには変わりない。
 慶子はその勘違いを鵜呑みにさせたまま立ち上がった。
 いきなり解剖はないだろう。未知の生物をいきなり殺すはずもない。
「フィオ、そろそろ寝なさい」
「わかった。じゃあ、オーリンも一緒だぞ」
 慶子は苦笑する。
 何だかんだと言っても、彼が喜ぶ姿は慶子にとっても喜ばしいことだ。
(あの子にも、ちゃんとした友達が必要よねぇ)
 だからこそ、同年代の真樹を紹介したのだが、本人達はあまり乗り気ではないようだった。
(今度は本物の女の子ね)
 どこかで見繕わなければならない。多少変な言動でも受け流してくれる、心の広い女の子。
 真樹はその点では理想だった。非常識な一家の中にいるものだから、フィオの奇妙な言動にも平然としている。しかも天使と知っているようだから、なおよかったのだ。
「そうそ。近々本当に兄さん帰ってくるから、それまでには徹底的にオーリンに教育しておくのよ」
「わかった」

 

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